亜鉛とは

亜鉛は人間にとってとても重要な必須ミネラル16種類のうちのひとつで、主に体内の骨格筋、皮膚、骨、脳、腎臓、肝臓に存在しています。

新陳代謝に必要な多くの酵素を作り、健康な身体を維持させるためにとても重要な役割をもっています。

身体の中でも新陳代謝が活発な部位には多くの亜鉛が必要とされ味覚を正常に保ったり、皮膚や粘膜を健康に保ちます。

また亜鉛はセックスミネラルとも呼ばれていて、精子の生成、性ホルモンの合成、男性ホルモンであるテストステロンの維持に大変有効であるとされています。

亜鉛は体内で作り出すことができないため、食事やサプリなどで体外から摂取する必要があります。

亜鉛の効果

亜鉛は体内のさまざまな部位で酵素の構造を作ったり維持します。

そもそも酵素とは身体の中の消化、吸収、代謝など様々な働きをサポートする分子で、これまでおよそ3000種類が発見されており、いまもまだ新しく発見され続けているタンパク質性の物質のことをいいます。

味覚

亜鉛は味覚に深く関係している栄養素で、人は食べ物の味を舌にある味蕾（みらい）という器官で感じ取っています。
味蕾は4週間ほどのサイクルで細胞を生まれ変わらせていて、その代謝に必要なのが亜鉛となります。

抗酸化作用

抗酸化とは活性酸素の発生により引き起こされる身体の酸化を抑える働きのことをいいます。

空気を吸い込むと、酸素の2％が活性酸素という物質になります。

活性酸素は体内に侵入する細菌を強い酸化力によって守ったり、酵素の働きを促してくれますが、この活性酸素が増えすぎた状態を酸化といます。

酸化が強くなりすぎると肌荒れ、老化、脳の神経細胞へのダメージによる思考力や記憶力の低下といったさまざまな症状を招き、生活習慣病、動脈硬化、がん、肝疾患といった重大な病気へと発展する危険もあります。

亜鉛はこの活性酸素を減らす活性酸素除去酵素の構成成分ともなっていて、がんや老化の進行を遅くすることができるといわれています。

免疫力向上

亜鉛による免疫力向上には3つの働きがあり、1つはウイルスがもつ増殖力、感染力に直接働きかけて弱めるというもの。

2つめは免疫細胞の働きを活発にし、侵入してきた病原菌を発見し破壊するといったもの。

3つめは病気を引き起こす細菌を攻撃する白血球にも亜鉛が含まれているため、傷や病気の早期回復だけでなく風邪など感染症にもかかりにくくなります。

新陳代謝

亜鉛はたんぱく質の新陳代謝を促します。
人の皮膚や髪はタンパク質で構成されているため亜鉛を過不足なく補うことで健康的な肌と髪を維持することができます。

生殖機能

前立腺と精子には亜鉛が多く含まれています。特に精子の形成には亜鉛は必須です。
テストステロン（男性ホルモン）の代謝や精子の運動を活性化するため男性不妊にも効果があるとされています。

亜鉛が不足した場合、性欲、性機能の低下によりED（勃起不全）が引き起こされるといわれています。

精神安定

脳機能のうち感情のコントロール、記憶といったものは神経伝達物質によって行われています。

この神経伝達物質を作り出すのに亜鉛が必要です。

亜鉛が十分に足りていると精神安定につながりますが、不足することで神経細胞の刺激伝達がおろそかになり脳機能が低下、うつ状態になってしまう可能性があります。

亜鉛が必要な人

・極端なダイエットや偏った食事をしている
・お酒をよく飲む
・スポーツをする、またはアスリートなど発汗量が多い
・精子の運動数、精子数の不足による男性不妊である
・細胞分裂が盛んにおこなわれる子供の成長期
・胎児期の妊婦

亜鉛が不足すると…?

亜鉛が不足すると、摂取することによる効果とは逆の症状が起きるといったことがほとんどです。

味を感じ取る味蕾が正常に機能しなくなることで起こる味覚障害、代謝が悪くなり、肌荒れや抜け毛が気になったり爪がもろくなってしまうといった症状があらわれます。

また、免疫が下がることで風邪や感染症を引き起こしやすくなる、ほかにも亜鉛が欠乏すると亜鉛欠乏症となり、胃腸機能の低下や、栄養素を摂取する量が減ってしまい症状が進行してしまう危険があります。

また、インスリンの構造維持にも大きく関わっているため、糖の代謝に影響し糖尿病や肝疾患などほかの病気を引き起こす原因となります。

亜鉛は汗の中に多く含まれているため、運動などで発汗量が増えると亜鉛不足になることがあります。
汗をかいたあとは積極的に亜鉛を摂取するようにしましょう。

亜鉛の摂取方法

亜鉛は体内で作られることがないため、不足を補うには食事やサプリメントなどで体外から摂取する必要があります。

サプリメントで摂取

亜鉛を気軽に摂取する方法のひとつがサプリメントです。
亜鉛成分のみや亜鉛成分にプラスして身体に必要だったり、相乗効果のある成分が配合されています。
過剰摂取にならない目安の用量が配合されているので簡単に亜鉛不足を補うことができます。

食事から摂取

たくさんある食材のなかには亜鉛が豊富に含まれているものがあります。
そういった食材を積極的に取り入れることで毎日の習慣のひとつである食事と一緒に亜鉛を効率よく摂取することが可能です。

目安量

2015年の日本人の食事摂取基準における1日の摂取推奨量は、

・18～69歳男性10mg/70歳以上男性9mg
・18歳～69歳女性8mg/70歳以上女性7mg
・妊娠中+2mg/授乳中+3mgとなっています。

摂りすぎを抑えるための耐容上限量という値も決められていて、18～29歳男性が40mg、30～69歳男性が45mg、70歳以上の男性が40mg、18歳以上の女性が35mgとなっています。

効果的な飲み方

亜鉛は効果を得たいと一気に多量、または高含有量の亜鉛を摂ると吸収率が悪くなってしまうため、少量、または低含有量のものをこまめに摂ることで吸収率を高めることができます。

体内に貯めておくことができない性質をもつことからもこまめな摂取がおすすめです。

また、食品中に含まれるアミノ酸、リン酸、有機酸などと結合して小腸で吸収されるので、これらが含まれるものと一緒に取ると効果的です。

フィチン酸、シュウ酸、食物繊維、EDTA、ポリフェノールなどは亜鉛の吸収を阻害することがわかっています。

アルコール分解時には亜鉛が消費され体内からの排出を促します。亜鉛の不足を感じた際は過度な飲酒は控えるようにしましょう。

亜鉛を多く含む食品

亜鉛が多く含まれる食品は魚介類、肉類、海藻、野菜があり、特に亜鉛が多く含まれているということで一般的にも浸透しているのが牡蠣です。

亜鉛が多く含まれる主な食材（100gあたりの亜鉛含有率も記載）は下記になります。

・牡蠣‐13.2mg
・ビーフジャーキー‐8.8mg
・煮干し‐7.2mg
・豚レバー‐6.9mg
・ごま‐5.9mg
・高野豆腐‐5.2mg
・牛もも肉‐4.4mg
・たまご(卵黄)‐4.2mg
・ウナギのかば焼き‐2.7mg

亜鉛はクエン酸やビタミンCを多く含むレモンやかぼす、柚子などのかんきつ類と一緒に摂取することで吸収率をアップさせることができます。

一方、亜鉛の吸収を妨げるフィチン酸は穀物や豆類に多く含まれるといわれています。

またインスタント食品やレトルト食品などの加工食品に含まれる成分のなかには亜鉛の吸収を妨げるものがあります。使用を控え、バランスの取れた食事をこころがけましょう。

亜鉛の副作用

亜鉛は1日の摂取量を守れば副作用の心配はありません。
ですが、過剰に摂取してしまった場合には副作用が起こることがあります。

1日2g以上を急激に摂った場合…嘔吐、食欲不振、腹部痙攣、頭痛、下痢といった症状が出ることがあります。

継続して慢性的に150mg～450mgの亜鉛を摂った場合…亜鉛過多となり、銅含有量の低下による銅欠乏症、免疫機能低下、副作用が起こることがあります。

銅欠乏症となると神経障害、低色素性貧血、脊髄症といった症状が起こることもあります。

ほかに亜鉛によるアレルギーがある方は摂取しない、または医師に相談するようにしてください。

亜鉛の注意点

・効果を求めて過剰に摂取することで銅の吸収を阻害する、また、副作用を引き起こしてしまうことがあります。決められた目安量は必ず守るようにしましょう。

・亜鉛は日常の食生活である程度多く摂りすぎてしまっても余剰分は排泄されますが、亜鉛の欠乏に関しては、亜鉛の欠乏症となることがあるので注意が必要です。

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参考サイト：
・人体における亜鉛-Wikipedia