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メトホルミンとピオグリタゾンの違いを比較解説
メトホルミンとピオグリタゾンは、どちらも糖尿病治療薬で、2型糖尿病の治療に広く使用されています。
とはいえ、
「メトホルミンとピオグリタゾンには具体的にどんな違いがある?」
「メトホルミンとピオグリタゾンの効果は何?」
「2つは併用できる?」
といった疑問をお持ちではないでしょうか。
そこで、この記事ではメトホルミンとピオグリタゾンの違いについて解説しながら、これらの疑問にお答えしていきます。
糖尿病治療薬について詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
メトホルミンとピオグリタゾンの違いを比較
メトホルミンとピオグリタゾンの大きな違いは、作用機序と副作用、体重への影響です。
以下の表に、メトホルミンとピオグリタゾンの違いをまとめました。
メトホルミン | ピオグリタゾン | |
---|---|---|
分類 | ビグアナイド系 | チアゾリジン系 |
効果 | 血糖値を下げる | 血糖値を下げる |
作用機序 | ・肝臓での糖新生を抑制する ・末梢での糖の取り込みを促進する ・腸管での糖の吸収を抑制する |
・肝臓での糖産生を抑制する ・末梢での糖の利用を促進する |
適応となる疾患 | ・2型糖尿病 ・多嚢胞性卵巣症候群 |
2型糖尿病 |
主な副作用 | 消化器症状(下痢や吐き気など) | むくみ |
重大な副作用 | 乳酸アシドーシス | 心不全 |
体重への影響 | 変わらない~減る | 増えやすい |
メトホルミンとピオグリタゾンで副作用や体重への影響の仕方などが違う理由は、作用機序が異なるからです。
メトホルミンは、肝臓での糖新生を抑えることで血糖値を下げ、インスリンを効きやすくする作用があります。
一方、ピオグリタゾンは、インスリンの働きを改善させることで、血糖値を下げる効果を発揮するのです。
また、メトホルミンは体内の余分な糖を排出するため、体重は変わらないか減る人が多いです。
しかし、ピオグリタゾンは水分や糖分が体内に蓄積するため、体重が増えやすいという特徴があります。
このように、メトホルミンとピオグリタゾンはどちらも血糖値を下げる効果がある医薬品ですが、作用機序の違いから副作用や体重への影響などが異なるのです。
ここからは、メトホルミンとピオグリタゾンについて、それぞれさらに詳しく解説していきます。
メトホルミンとは
メトホルミンは、ビグアナイド系に分類される糖尿病治療薬で、主に2型糖尿病の治療で使用されています。
なお、先発薬はメトグルコです。
メトホルミンは、インスリン分泌を増加させず、インスリンを効きやすくすることで血糖値を下げる効果を発揮します。
また、不妊の原因とされる多嚢胞性卵巣症候群の治療でも使用されます。
メトホルミンを使用した不妊治療では、多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発や多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激の効果が認められているのです。
なお、メトホルミンの効果は体重減少につながるため、ダイエットにも活用されています。
メトホルミンには様々な効果があり、2型糖尿病の治療や不妊治療、ダイエットなど幅広く使用されているのです。
ピオグリタゾンとは
ピオグリタゾンは、チアゾリジン系に分類される糖尿病治療薬で、インスリン抵抗性のある2型糖尿病の治療に使用されます。
なお、先発薬はアクトスです。
ピオグリタゾンは、肝臓での糖の産生を抑制し、筋肉など末梢組織で糖を効率よく消費されるように促します。
糖の取り込みと消費を高めることで、インスリン抵抗性を改善させて血糖値を下げる効果を発揮するのです。
そのため、ピオグリタゾンはインスリン抵抗性のある2型糖尿病の治療に使用されています。
ピオグリタゾンによるむくみに注意
ピオグリタゾンの主な副作用であるむくみは、心不全を発症した場合にも現れる症状のため注意が必要です。
ピオグリタゾンによるむくみは、体内にナトリウムが蓄積しやすくなり、循環血漿量が増えることが原因で起こります。
循環血漿量の増加は、心臓に負担がかかることによって、心不全のリスクも高まるのです。
なお、ピオグリタゾンによるむくみは、特に女性に多くみられる症状でインスリンと併用した場合はさらに発現率は高まります。
むくみの症状があらわれた場合は、ピオグリタゾンの用量を減らし、むくみが治まらない場合はループ利尿剤と併用することで改善が期待できます。
動悸や息切れなどの心不全の症状が現れた場合は、使用を中止して医師へ相談してください。
ピオグリタゾンによるむくみは、特に女性に多い症状で、心不全の症状でもあるため注意が必要です。
メトホルミンとピオグリタゾンの使い分け
メトホルミンとピオグリタゾンは、目的に合わせて使い分けることができます。
体重への影響が気になる人はメトホルミンを、飲む回数が少ない医薬品がいい人はピオグリタゾンを選ぶとよいでしょう。
メトホルミンは糖の吸収を抑えるだけでなく、余分な糖を便として排出する作用があるため、体重が増加しにくいといわれています。
ダイエット目的で使用する人も多いため、体重への影響が気になる人はメトホルミンがおすすめです。
また、なるべく飲む回数を減らしたい人は、ピオグリタゾンがおすすめです。
メトホルミンは1日2~3回飲む必要がありますが、ピオグリタゾンは朝食前または朝食後に1回飲むだけです。
飲む回数が少ないため、飲み忘れる心配も減らせます。
メトホルミンとピオグリタゾンの使い分けでは、治療の効果を重視することはもちろんですが、ライフスタイルや飲む目的に合った方を選ぶことも大切です。
メトホルミンとピオグリタゾンは併用可能
メトホルミンとピオグリタゾンは、併用可能です。
2つを併用することによって、以下のような相乗効果が見込めます。
・血糖値を下げる効果が強くなる
・体重が増加しにくい
・むくみを軽減できる
単体での使用では効果が得られない場合は、2種類の医薬品を使用してインスリン感受性をさらに高めることができます。
メトホルミンとピオグリタゾンは、血糖値を下げるメカニズムがそれぞれ異なるため、併用によって相乗効果が期待できるのです。
また、ピオグリタゾンは水分を溜め込むため体重が増加しやすい特徴がありますが、余分な糖を体外に排出するメトホルミンと併用することによって、体重増加とむくみを軽減できます。
ただし、メトホルミンとピオグリタゾンはそれぞれ単体での使用であれば低血糖を起こす可能性は低いですが、併用する場合は低血糖を引き起こすリスクが高くなります。
このように、メトホルミンとピオグリタゾンは相乗効果が見込める併用可能な医薬品です。ただ、併用によって低血糖を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
メトホルミンとピオグリタゾン併用へのアログリプチン追加
メトホルミンとピオグリタゾンの併用で血糖値の上昇を抑えられない場合、さらにアログリプチンを追加することも可能です。
海外での臨床試験では、3つの医薬品の併用で十分な血糖コントロールが得られ、さらには膵β細胞機能改善も認められたと報告されています。
アログリプチンは、DPP4阻害薬に分類される2型糖尿病治療薬のひとつです。
血液中にあるDPP4という酵素の働きを阻害して、インスリン分泌を促すインクレチンの分解を抑制します。
この働きで、膵臓で分泌されるインスリンの量を調整して血糖値を降下させることができるのです。
血糖値を下げるメカニズムが異なるメトホルミン、ピオグリタゾン、アログリプチンの3つを併用することで、良好な血糖コントロールと膵機能の改善が期待できます。
メトホルミンとピオグリタゾンの配合剤
メトホルミンとピオグリタゾンには、2つの有効成分を1つの錠剤にした配合剤があり、国内外で発売されています。
日本製のものはメタクト配合錠、海外製はアクトプラスメットやコンペタクトなどです。
メトホルミンとピオグリタゾンの併用は、臨床試験でも有効性が認められています。
ただ、単体同士を併用する場合は1日に飲む錠剤の数や回数が多くなってしまいます。
そこで、1日の飲む錠剤の数や回数を減らすことを目的としてメトホルミンとピオグリタゾンの配合剤が開発されました。
メトホルミンとピオグリタゾンの配合剤では、飲む回数は1日1回となっています。
数種類の医薬品を飲んでいる場合、配合剤に切り替えることで飲む錠剤の数や回数を減らせるだけでなく、費用も抑えることができます。
また、どちらか一方を飲んでいて効果が得られなくなった場合に、配合剤へ切り替えて治療効果を高めることも可能です。
そのため、メトホルミンとピオグリタゾンは2つの有効成分をあわせた配合剤が国内外で発売されているのです。
メトホルミンとピオグリタゾン併用の飲み方
メトホルミンとピオグリタゾンを併用するときの飲み方は、以下の2パターンです。
①朝食前または、朝食後に2つ一緒に飲む
②朝食前と朝食後に分けて飲む(朝食前にどちらかを飲んで、朝食後にもう一方を飲む)
このような飲み方になる理由は、それぞれを単体で飲むときの飲み方が関係しています。
メトホルミンとピオグリタゾンをそれぞれ単体で飲むときの飲み方は、以下の通りです。
〈メトホルミン〉
・1日2~3回
・食前または食後に飲む
〈ピオグリタゾン〉
・1日1回
・朝食前または朝食後に飲む
・生理機能が低下している高齢者や、むくみが懸念される女性は15mgから始める
ピオグリタゾンが1日1回朝食前または朝食後に飲むと指定されているため、このタイミングに合わせてメトホルミンを飲むのです。
なお、メトホルミンやピオグリタゾンは、効果や副作用に合わせて飲む量を調節できます。
ただし、1日に飲める量はメトホルミンが最大2250mg、ピオグリタゾンは最大45mgです。
飲み始めや飲む量を増やしたタイミングは、腹痛や下痢といった消化器症状やむくみなどの副作用が現れやすくなります。
そのため、少ない量から飲み始めて、少しずつ増量していきましょう。
また、過剰摂取にも注意が必要です。
1日の最大量を超えて飲んでしまうと、乳酸アシドーシスなどの重大な副作用を引き起こすおそれがあるため用法用量は必ず守ってください。
そのため、メトホルミンとピオグリタゾンを併用するときは朝食時に2つ一緒に飲むか、朝食の前と後で分けて飲みましょう。
まとめ
ここまでに解説した、メトホルミンとピオグリタゾンについてのポイントをまとめました。
- メトホルミンとピオグリタゾンは2型糖尿病治療薬
- メトホルミンとピオグリタゾンの違いは作用機序、副作用、体重への影響
- メトホルミンとピオグリタゾンは目的に合わせて使い分ける
- メトホルミンとピオグリタゾンは併用可能
メトホルミンとピオグリタゾンは異なる作用機序によって血糖値を下げる糖尿病治療薬です。
併用も可能で、様々な目的に合わせた使い方ができるため、2型糖尿病の治療に広く使用されています。
Q&A
メトホルミンとピオグリタゾンについてのよくある質問にお答えします。
糖尿病治療薬を選ぶときの参考にしてください。
Q.ピオグリタゾンは男女差がありますか?
A. ピオグリタゾンは、男性と女性で効果や副作用の現れ方に差があります。
ピオグリタゾンは女性の方が効きやすいため、女性は男性の半分の用量から始めることとされています。
これは、女性ホルモンが深く関係していると考えられています。
また、副作用のむくみも男性に比べて女性の発現率が高いため、十分に注意が必要です。
Q.メトホルミンで痩せないのはなぜ?
A. メトホルミンを飲んでいるにもかかわらず、体重が減らない場合は以下の原因が考えられます。
・飲んでいる期間が短い
・飲み忘れが多い
・食べ過ぎているなど
メトホルミンで体重の変化がみられるまでには、一定期間継続して飲むことが重要です。
飲み始めてまだ日が浅い場合は、飲み忘れないように気を付けながら継続して飲んで少し様子を見てみましょう。
また、摂取カロリーが消費カロリーを上回ってしまうと、メトホルミンの効果が薄れてしまいます。
メトホルミンを飲んでいるからといって、食べすぎないように注意してください。