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メトホルミン塩酸塩とは?作用機序や種類について解説
メトホルミン塩酸塩は、糖尿病治療薬であるメトグルコに含まれる成分です。
メトホルミン塩酸塩には様々な効果があり、不妊治療やダイエットにも活用されています。
この記事では「メトホルミン塩酸塩ってどんな成分?」という疑問を持っている人に向けて、メトホルミン塩酸塩の成分や種類、作用機序などについて解説していきます。
メトホルミンの成分について詳しく知りたい人は、是非最後までご覧ください。
メトホルミン塩酸塩とは
メトホルミン塩酸塩は、ビグアナイド系糖尿病薬の有効成分です。
血糖値を下げる効果があり、2型糖尿病の治療に使用されます。
メトホルミン塩酸塩錠は、有効成分のメトホルミン塩酸塩とその他の添加剤からできている錠剤タイプの飲み薬です。
「メトホルミン」と呼ばれることが多いですが、一般名はメトホルミン塩酸塩です。
医薬品の一般名とは、その医薬品に含まれている有効成分のことです。
メトホルミン塩酸塩を商品として販売するときは別の名称で表記されます。
代表的な商品名には、メトグルコなどが挙げられます。
以上がメトホルミン塩酸塩の基本的な情報です。
次の項目から、メトホルミン塩酸塩の効果や作用機序、種類などについて解説していきます。
メトホルミン塩酸塩の効果
メトホルミン塩酸塩の主な効果は、血糖値を下げる効果です。
血糖値を下げる効果は、2型糖尿病の治療やダイエットに有効です。
また、多嚢胞性卵巣症候群に対する排卵を誘発する効果も認められています。
通常はクロミフェンという医薬品を使用しますが、効果が不十分な場合にメトホルミン塩酸塩を併用して不妊治療をおこないます。
不妊治療へのメトホルミン塩酸塩の使用は、2022年に新たに保険適用になりました。
また、肥満を伴う2型糖尿病やダイエットに有効な体重減少効果もあります。
このようにメトホルミン塩酸塩には様々な効果が報告されており、研究が続けられているのです。
メトホルミン塩酸塩の効果については、別の記事で詳しく解説しています。
こちらもあわせてお読みください。
メトホルミン塩酸塩の作用機序
メトホルミン塩酸塩の作用機序は複数あると考えられています。
現在判明している、作用機序は下記の通りです。
・肝臓での糖新生を抑制する
・末梢での糖の取り込み、利用を促進する
・AMPK(体内の酵素)を活性化させ、脂肪燃焼を促進させる
・インスリン抵抗性を改善させる
・腸管からの糖の吸収を抑制する
・糖を便中へ排泄する など
これらの作用によって、血糖値を下げる効果や体重減少効果を発揮します。
メトホルミン塩酸塩は、インスリンの分泌を増やす作用がないため、単体で飲む場合は低血糖を起こしにくいという特徴があります。
このようにメトホルミン塩酸塩の作用機序は複数ありますが、全貌はまだ明らかになっていません。
糖尿病とは
糖尿病とは、血糖値が高い状態が慢性的に続く疾患です。
糖尿病では、生活習慣や遺伝因子などの影響でインスリンが不足したり、効きにくくなったりします。
すると、血糖値を上昇させない機能が低下して、血糖値が高い状態が続いてしまうのです。
糖尿病には主に1型糖尿病と2型糖尿病があり、全体の約9割が2型糖尿病です。
メトホルミン塩酸塩は、2型糖尿病に効果的で広く使用されています。
治療をしないで糖尿病が進行すると、糖尿病性腎症、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害などの合併症を引き起こします。
また、糖尿病だけが原因ではありませんが、高脂血症や動脈硬化による心不全や脳卒中などを引き起こす可能性も高くなるのです。
ただし、糖尿病は正しい治療や生活習慣の改善などで、進行を遅らせることができます。
メトホルミン塩酸塩の副作用
メトホルミン塩酸塩の主な副作用は、下痢や吐き気などの消化器症状と低血糖です。
また、最も注意が必要な副作用に乳酸アシドーシスがあります。
乳酸アシドーシスは悪化すると低血圧や昏睡などに陥り、命に関わることもある危険な状態です。
メトホルミン塩酸塩は、飲む量が多いほど効果が強くなる性質があります。
その一方で、飲む量が多いと副作用を引き起こすリスクも高くなるため注意が必要です。
メトホルミン塩酸塩の副作用は飲み始めた時や、飲む量を増やしたときに起こりやすいといわれています。
体調の変化を見逃さないように注意して、不安な症状がある場合は医師や薬剤師に相談しましょう。
メトホルミン塩酸塩250mg錠と500mg錠の違い
メトホルミン塩酸塩の規格には、含有量が異なる250mg錠と500mg錠の2種類があります。
含有量が異なるメトホルミン塩酸塩錠は、始めて飲むときは250mg錠、慣れてきたら500mg錠と飲む量を増やすときに使い分けます。
また、メトホルミン塩酸塩の規格は、含有量の異なる下記の5つです。
・250mg
・500mg
・750mg
・850mg
・1000mg
250mgと500mgは日本国内でも流通しており、メトホルミン塩酸塩の含有量が750mg以上のものは、主に海外で流通しています。
メトホルミン錠の種類
メトホルミン錠には、先発薬と後発薬(ジェネリック医薬品)があります。
メトホルミン錠の先発薬はグリコラン、メトグルコ、メルビンです。
ただし、現在も製造・販売されているのはメトグルコのみです。
後発薬には多くの種類があり、以下の商品が挙げられます。
・ゾメット500mg
・グルコファージ500mg、850mg、1000mg
・メトホルミン塩酸塩錠250mgMT「DSEP」、500mgMT「DSEP」
・メトホルミン塩酸塩錠250mgMT「トーワ」 など
なお、先発薬のグリコランとメトグルコについて、別の記事で詳しく紹介しています。
こちらもあわせてお読みください。
メトホルミン錠はどこで入手できる?
メトホルミン錠は、大きく分けると医療機関で処方してもらうか、通販サイトで購入するかのどちらかで入手できます。
処方してもらう場合、2型糖尿病治療や不妊治療は保険適用になります。
ただ、ダイエットなど治療以外の目的の場合は保険適用外です。
そのため、美容クリニックなどの自由診療をおこなっている医療機関で処方してもらうことができます。
通販サイトで購入する場合、海外医薬品を取り扱っている個人輸入代行サイトで購入可能です。
メトホルミン塩酸塩は発がん性物質?
メトホルミン塩酸塩に発がん性はありません。
メトホルミン塩酸塩による発がん性が疑われた理由は、以前一部のメトホルミン錠から発がん性物質が検出されたためです。
しかし、これは錠剤が入っていたPTPアルミ箔の印刷インクに含まれる物質が、錠剤の原料に反応したことが原因で生成された可能性が高いとされています。
また、全てのメトホルミン錠から発がん性物質が検出されたわけではありません。
なお、メトホルミン塩酸塩による発がん性は10年間毎日飲み続けた場合で、0.000182%とされています。
つまり、55万人に1人の確率ということです。
以上を踏まえて、メトホルミン塩酸塩自体に発がん性がある可能性はほぼないとされています。
まとめ
ここまでにお伝えしたことのポイントをまとめました。
- メトホルミン塩酸塩は、糖尿病治療薬のメトグルコに含まれている有効成分
- 主に血糖値を下げる効果がある
- 2型糖尿病治療の他に、不妊治療やダイエットにも活用されている
メトホルミン塩酸塩は2型糖尿病の治療で広く使用されており、後発薬も多く存在します。
近年、新たな効果も報告されており、今後他の疾患などの治療への活用が期待されています。
Q&A
メトホルミンについてのよくある質問にお答えします。
Q.メトホルミンダイエットで何㎏痩せる?
A. メトホルミンダイエットでは、54週間で約1㎏減量したという試験結果があります。
この試験では、メトホルミンを飲み始めて26週間後から有意な体重減少が見られ、54週間に約1kgの減量成功が認められました。
ただ、体重減少効果には個人差があり、一定期間継続してメトホルミンを飲むことが必要です。
Q.メトホルミンはなぜ糖尿病治療の第一選択薬なのですか?
A. メトホルミン錠が糖尿病治療の第一選択薬とされている理由は、安全性や有効性に加えて安価であるためです。
メトホルミン塩酸塩は、インスリン分泌を増やさず血糖値を下げるため、単体で飲む場合は低血糖を起こしにくい特徴があります。
また、体重も増えにくいという利点があり治療に広く使われています。