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メトホルミンの禁忌についてわかりやすく解説
メトホルミンは、禁忌に該当する人は飲むことができません。
また、そのときの健康状態や誤った飲み方によってはリスクがあります。
「どのような持病があると飲めないのか」
「どのような体の状態だと飲めないのか」
「どのような副作用や症状のリスクがあるのか」
この記事では、安心してメトホルミンを飲みたい人に向けてメトホルミンを飲むときの禁忌事項をまとめました。注意事項も詳しく解説していますのでぜひ、参考にしてください。
メトホルミンの禁忌
メトホルミンは経口摂取が困難な人や、寝たきりの全身状態の悪い人は飲むことができません。
また、年齢が20歳未満または75歳以上の人への投与は安全性が確立しておらず、深刻な健康被害が起こる可能性があります。自己判断での服用は控えた方が良いでしょう。
上記の他、とくに気をつけたい禁忌の事例が5つあります。
①乳酸アシドーシスを起こしやすい人
②医療機関による血糖管理が必要な人
③低血糖を起こす恐れがある人
④胎児へ影響する可能性がある人
⑤アルコールを大量に飲む人
上記に該当する場合、重い副作用の発症や、場合によっては命にかかわる危険性があります。
それぞれわかりやすく解説していきますので、心当たりがある人や不安がある人は順番に確認していきましょう。
①乳酸アシドーシスを起こしやすい人
健康な人と比較して、乳酸アシドーシスのリスクが高いケースは以下の通りです。
・乳酸アシドーシスの既往歴がある
・透析治療をしている
・重度の腎機能障害がある
・重度の肝機能障害がある
・心血管系に重度の障害がある
・肺機能に重度の障害がある
・脱水状態または脱水になりかけている
・過度のアルコールを摂取をしている
・ヨード造影剤の使用時または使用の予定がある
このような条件に該当する人は、メトホルミンを飲まないようにしましょう。
乳酸アシドーシスとは、血液中の乳酸が増加して血液が酸性に傾いている状態のことです。 腹痛、嘔吐、倦怠感、筋肉痛から始まり、脱水、低血圧、昏睡へと症状が進行していきます。
とはいえ、乳酸アシドーシス発症の条件に該当しなければ心配いりません。
メトホルミンは世界中で広く使用され続けている、安全性の高い医薬品です。
副作用の乳酸アシドーシスについてもっと詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。
②医療機関による血糖管理が必要な人
医療機関による血糖管理が必要な人にメトホルミンは適していません。
・重症ケトーシスの人
・糖尿病性昏睡または糖尿病性前昏睡の人
・一型糖尿病の人
・重症感染症や重篤な外傷の人
・手術前後の人
上記のような、輸液やインスリンを使用して血糖値をコントロールする必要がある場合にはメトホルミンを飲むことができません。
また飲食物の摂取が制限される手術前は、メトホルミンを休薬する必要があります。
手術後も指示があるまでメトホルミンを再開することはできません。おおよその目安としては、状態が安定して通常食に戻ってから1週間程度とされています。
③低血糖を起こす恐れがある人
低血糖を起こす可能性が高い人は以下の通りです。
・栄養不良の人
・衰弱状態の人
・飢餓状態の人
・脳下垂体機能不全の人
・副腎機能不全の人
これらの状態でメトホルミンを飲んでしまうと、危険なレベルまで血糖値が下がってしまう恐れがあります。
メトホルミンは「シックデイ」と呼ばれる、食事が摂れないほど体調が悪いときには飲むことをやめるべきとされています。
副作用も起こしやすくなるため、体調がすぐれない時や食事の摂取が滞っている状態のときは、メトホルミンの服用を控えましょう。
低血糖の対処法として、ブドウ糖やラムネを持ち歩き、症状が出た際にすぐ摂取できるようにしておくことをおすすめします。
④胎児へ影響する可能性がある人
以下に該当する場合にメトホルミンを飲むと、胎児に影響する可能性があります。
・妊娠中
・妊娠の可能性
・授乳中
また、糖尿病がある女性が妊娠を希望する場合、事前に血糖を十分に管理した上で計画的に妊娠することが望ましいとされています。
妊娠初期や排卵後または採卵後はメトホルミンの服用を中止する必要があるため注意してください。
一方で、メトホルミンは以下の不妊治療において保険適用されます。
・多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発
・多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激
多嚢胞性卵巣症候群は妊娠可能な女性の6~10%が発症するとされています。
排卵誘発に用いた場合、卵巣過剰刺激の結果として多胎妊娠(二人以上の胎児が同時に子宮内にいる状態)となる可能性がありますが、胎児への影響はなく、有用性を示すという報告があります。
服用期間中は基礎体温を記録しておくことをおすすめします。
十分な知識と経験のある医師のもと、安全にメトホルミンを飲みましょう。
⑤アルコールを大量に飲む人
メトホルミンに過度のアルコールは禁忌とされています。
乳酸アシドーシスや、重度の低血糖を引き起こす危険性が高まるためです。
仕事の付き合いなどで飲酒の機会が多い人、アルコールが好きで普段から飲酒の習慣がある人は注意が必要です。
ただし、過度のアルコールは禁忌であるものの、適量を守れば問題ありません。
メトホルミンを飲んでいる人のアルコールの許容範囲については、別の記事で詳しく解説しています。以下のページを参考にしてください。
メトホルミンの併用禁忌薬は?
メトホルミンに併用禁忌薬(飲み合わせてはいけない医薬品)はありません。
しかし、併用するにあたって注意が必要な医薬品があります。
それは乳酸アシドーシスを起こすリスクのある医薬品や、血糖降下作用を増強・減弱する医薬品です。
以下はメトホルミンを飲んでいる人が注意するべき医薬品です。
【乳酸アシドーシスを起こすリスクがある医薬品】
・ヨード造影剤
・ゲンタマイシンなどの抗生剤
・利尿作用のある薬剤
・イメグリミン塩酸塩
【血糖降下作用を強める医薬品】
・各種糖尿病薬
・タンパク同化ホルモン剤
・サリチル酸剤
・β遮断薬
・モノアミン酸化酵素阻害剤
【血糖降下作用を弱める医薬品】
・アドレナリン
・副腎皮質ホルモン
・甲状腺ホルモン
・卵胞ホルモン
・ピラジナミド
・イソニアジド
・ニコチン酸
・フェノチアジン系薬剤
併用する場合は体調の経過に気をつけるようにしましょう。
ヨード造影剤とは
ヨード造影剤とは、CT検査や血管造影検査で使用される医薬品です。
静脈に注射し、検査後は尿として体外へ排出されますが、一時的に腎機能を低下させる可能性があります。
メトホルミンと併用すると乳酸アシドーシスを引き起こすリスクが高くなるため、検査の前後はメトホルミンを休薬しなければなりません。
メトホルミンを休薬する期間や、緊急でヨード造影剤の検査が必要になった場合について以下のページで解説しています。
高齢者がメトホルミンを飲むリスク
高齢者は腎機能や肝機能が低下しているため、メトホルミンによって乳酸アシドーシスを引き起こす可能性が高くなります。
定期的に状態を観察し、投与量の調節や継続の検討が必要になるため、自己判断で服用するのは危険です。
とくに75歳以上の人へメトホルミンを投与することは禁忌だという意見もあります。
高齢者のメトホルミンの使用は慎重に判断しなければなりません。
医師の指導のもとメトホルミンを使用しましょう。
メトホルミンの腎機能や肝機能への影響
メトホルミンに腎機能や肝機能を低下させるような作用はありません。
重度の腎機能・肝機能障害の人へメトホルミンが投与できない理由は、腎機能が低下しているとメトホルミンの排泄が上手くできないこと、肝機能の低下では体内に乳酸が溜まりやすくなってしまうことから、乳酸アシドーシスの発症リスクがあるためです。
メトホルミンには慢性腎臓病の進行を抑制する効果や、脂肪肝を改善する効果があると期待されており、腎機能・肝機能障害が軽度から中等度であれば、医師の指導のもと安全に使用することができます。
とはいえ、腎機能を表すeGFRの数値が30(mL/1.73m2)未満の人への投与は禁忌と定められています。
腎機能や肝機能に不安のある人は定期的に数値の測定をおこない、医師の診断を受けた上で処方してもらうことが大切です。
まとめ
メトホルミンが禁忌になるケース
・経口摂取が困難な人
・寝たきりの全身状態が悪い人
・乳酸アシドーシスを起こしやすい人
・医療機関による血糖管理が必要な人
・低血糖を起こす恐れがある人
・胎児へ影響する可能性がある人
・アルコールを大量に飲む人
メトホルミンの使用に注意が必要なケース
・年齢が20歳未満、または75歳以上
・乳酸アシドーシスを起こすリスクのある医薬品や、血糖降下作用を増強・減弱する医薬品と併用する場合
禁忌に該当しなければ、メトホルミンは安心して飲める医薬品です。
体調や、他の医薬品との併用に気をつけながら使用しましょう。
Q&A
メトホルミンの禁忌に関連したよくある質問にお答えします。
Q.メトホルミンを飲むときに気をつけることは?
A.低血糖や脱水にならないように気をつけましょう。
シックデイ(発熱や嘔吐などの体調不良で食事が摂れない状態)のときはメトホルミンを飲まず、回復に努めてください。食事と水分が正常に摂れるようになってからメトホルミンを再開しましょう。
Q.メトホルミンは空腹時に飲んでも良い?
A.食事をとらずにメトホルミンを飲むと、低血糖や消化器症状などの副作用が起こりやすくなります。
ジュースやゼリーなどで構いませんので、何か胃の中に入れてからメトホルミンを飲むようにしてください。
Q.メトホルミンは1日何mgまで飲める?
A.1日の最大摂取量は2,250mgまでとなっています。
通常、成人であれば1日750mg~1,500mgまでの服用が推奨されています。
最初から最大摂取量を飲むようなことはせず、少ない量から飲み始めてください。副作用などの反応をみながら徐々に量を増やすことがおすすめです。