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糖尿病とは|わかりやすく原因や症状を解説
糖尿病とは、血液中の血糖値をコントロールしているインスリンというホルモンが十分に機能しないために、血糖値の高い状態が続くことです。
血糖値が高いまま放置すると血管が傷つき、心臓病や動脈硬化、失明、足の切断といった、より重い病気を引き起こす可能性があります。
「日本人は糖尿病になりやすい体質」といわれているほど、誰にでも起こりうる病気です。
この記事でわかりやすく解説していきますので糖尿病の知識を身につけておきましょう。
糖尿病とインスリンの関係
糖尿病を発症する原因に、インスリンは深く関わっています。
インスリンは、体内で唯一の血糖値を下げるホルモンです。
食後の血糖値の上昇に反応して、膵臓から分泌されます。
上昇した血液中の糖を全身の臓器や筋肉へ運び、エネルギーとして取り込むよう働きかけて血糖値を下げています。
インスリンの働きが弱くなったり、分泌されなくなると、血液中の糖の濃度はどんどん高くなってしまいます。
これが糖尿病を発症する引き金となるのです。
糖尿病の原因と種類
糖尿病は、発症の原因によって1型糖尿病と2型糖尿病に分けられます。
どのような違いがあるのか、下の表にまとめました。
1型糖尿病 | 2型糖尿病 | |
---|---|---|
原因 | 自己免疫の異常により膵臓の細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなる | ・遺伝的体質 ・過食 ・運動不足 上記によってインスリンの働きや分泌量が低下する |
症状 | ・のどが渇く ・頻尿 ・体重減少 ・ひどい疲れ |
・激しい空腹感やのどの渇き ・頻尿 ・疲労感 ・皮膚が乾燥してかゆい ・かすみ目 ・ED(勃起不全) |
体型 | 正常または痩せ型 | 正常または肥満型 |
発症 年齢 |
子どもや若年層に多い | 中高年に多い |
発症の しかた |
・急に発病する ・進行が早い |
・自覚症状なくゆるやかに発症 ・進行が遅い |
治療法 | インスリン治療 | ・食事療法 ・運動療法 ・内服薬 ・インスリン治療 |
患者の 割合 |
5%以下 | 90%以上 |
1型糖尿病と2型糖尿病以外にも、妊娠中に血糖値が上昇してしまう妊娠糖尿病というものもあります。
それぞれのくわしい特徴について次の項目から解説していきます。
1型糖尿病
自己免疫の異常やウイルス感染により、膵臓からインスリンを分泌できなくなることが原因で発症します。
本来はウイルスなどの異物から体を守るために働くはずの免疫機能ですが、間違って自分の正常な組織を標的に攻撃し、膵臓の一部を破壊してしまうことで起こります。
膵臓からインスリンが全く、またはほとんど出なくなるため、インスリン製剤による治療をおこなわなければ血糖値を下げることができません。
1型糖尿病は主に子どもや若い人に多くみられ、遺伝による発症は極めて少ないといわれています。
2型糖尿病
2型糖尿病は遺伝や生活習慣の乱れにより、インスリンの働きや分泌が低下することで発症します。
2型糖尿病の遺伝は、厳密には糖尿病自体が遺伝するのではなく、糖尿病になりやすい体質が遺伝します。
糖尿病になりやすい体質に加えて、日頃の食生活の乱れや運動不足、過度なストレスが組み合わさると、インスリンの働きや分泌量の低下が起こり、血糖値の高い状態が続いてしまいます。
また、2型糖尿病は体内である程度はインスリンが作られているため、発症に気がつかないケースが多くあります。
発症してから診断を受けるまでに数年から数十年かかるため、若い人よりも40歳以上の人に多くみられます。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は妊娠をきっかけに初めて診断された、糖尿病には至らない糖代謝異常のことです。
妊娠時に胎盤から分泌されるホルモンなどの影響でインスリンが効きにくくなり、血糖値が上昇することで診断されます。
母体が高血糖だと胎児も高血糖になってしまい、合併症が起こりうる可能性があるため、しっかりと治療を受けなければなりません。
大体の場合は出産すると正常に戻りますが、妊娠糖尿病になった人は出産後に糖尿病を発症するリスクが高くなるといわれています。
妊娠中だけでなく、出産後も定期的な検査が必要になります。
出産後は育児で忙しくなりますが、お母さん自身の健康にも気を配りましょう。
糖尿病の初期症状
糖尿病は初期症状がほとんどありません。
代表的な糖尿病の自覚症状に「のどの渇き」「頻尿」「疲労感」などが挙げられますが、これらは高血糖状態が長く続いたときに起こる症状のため、糖尿病は進行していると考えられます。
発症したばかりの状態では気がつかないまま過ごしている人が多いのです。
「糖尿病は治らない」といわれていますが、初期の段階で血糖値を良好にコントロールできれば、薬のない生活を送れるようになる人もいます。
将来の健康のためにも、早期発見、早期治療が大切です。
健康診断などで糖尿病の疑いを指摘された場合は、自覚症状がなくても、早めに病院を受診して治療を受けましょう。
糖尿病の検査
糖尿病の検査は血液検査と尿検査があります。
血液検査
血糖値やHbA1cの数値を測定します。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、過去1~2ヶ月間の血糖値の平均のことです。
血糖値の高さは一時的なものなのか、それとも慢性的に続いているのか判断することができます。
尿検査
尿中アルブミンの数値を測定します。
尿中アルブミンとは尿蛋白の主成分で、数値が高いと腎機能が低下している可能性があります。
糖尿病性腎症などの合併症リスクを早期で発見し、治療に反映できるため必要な検査になります。
糖尿病かどうかを調べるには、血液検査のみでも判断できます。
しかし正確な診断や治療方針の確定のためにも、両方の検査を受けることを推奨します。
糖尿病は何科?
糖尿病の検査は内科や泌尿器科で受けられます。
より専門的な検査や治療を希望する場合は、糖尿病内科など糖尿病に特化している医療機関がおすすめです。
糖尿病内科には、糖尿病専門医という豊富な知識や経験を持っている医師が在籍していることが多く、より専門的なアドバイスを受けられます。
また定期的な検査で通院することを考え、自宅や職場から近い場所など、継続して通える医療機関を選ぶと良いでしょう。
糖尿病の合併症
糖尿病が原因で、全身の臓器や器官で合併症を引き起こすことがあります。
血糖値が高い状態が続くと、血管が損傷を受けたり詰まったりして、血流が滞ってしまうからです。
なかでも「神経障害」「網膜症」「腎症」は発症する確率が高く、糖尿病の三大合併症と呼ばれています。
合併症は一度発症すると治すことが難しいため、予防に努めることが大切です。
できるだけ早い段階から治療を始め、血糖値を正常に維持しましょう。
もし合併症を発症したとしても、通院や生活習慣の改善で血糖値を正常に保てれば、進行は遅らせることができます。
糖尿病は遺伝?なりやすい人とは
1型糖尿病は遺伝による発症は極めて少ないのに対し、2型糖尿病は糖尿病になりやすい体質が遺伝する傾向があります。
また下記に当てはまる場合も、たとえ家族に糖尿病の人がいなくても、糖尿病になりやすくなるため注意してください。
・家族に肥満、脳卒中、心臓病の人がいる
・甘い食べ物や脂質の多い食事が好きでよく食べる
・アルコールをよく飲む
・体を動かす習慣がない
・太りすぎている
・ストレスの多い生活環境にいる
日頃の生活習慣が、糖尿病の発症に大きく影響を与えていることがわかります。
糖尿病の予防法
1型糖尿病は突然発症するため、予防法が確立されていないのが現状です。
一方、2型糖尿病や妊娠糖尿病は生活習慣を整えることで予防できます。
とくに以下の3点に気をつけましょう。
①食生活
過食や偏食をせず、規則正しい食事をする。
②運動不足
運動の習慣をつける。とくに全身を動かす有酸素運動が良い。
③過度なストレス
気分転換の方法をみつけてストレスを溜めすぎない。
これらを意識して行動すると、インスリンの効きが良くなり、膵臓の負担を軽減できます。
また睡眠時間を適切にとることも、糖尿病予防に効果的なことがわかっています。
最適な睡眠時間は個人差がありますが、7~8時間を目安に睡眠をとるよう心がけてみてください。
まとめ
糖尿病についてここまでの解説をまとめました。
- 糖尿病とは、インスリンの働きや分泌が低下して高血糖状態が続くこと
- 1型糖尿病は自己免疫の異常によってインスリンが分泌されなくなり発症する
- 2型糖尿病は遺伝や生活習慣の乱れが原因でインスリンの働きや分泌が低下し発症する
- 糖尿病の検査は血液検査と尿検査があり、内科や泌尿器科で受けられる
- 生活習慣を整えれば2型糖尿病は予防できる
Q&A
糖尿病についてよくある質問にお答えしていきます。
Q.糖尿病は治らない病気?
A. 2型糖尿病は早期から治療を開始すれば、薬なしでも生活できる可能性があります。
糖尿病は放置すると確実に進行していく病気です。
食事・運動などの生活習慣の改善や、病状に合わせた薬の服用など、治療をおこなわなければ糖尿病の進行を止めることができません。
早い段階から真剣に治療に取り組めば、健康な人と同じように生活できるため、早期発見・早期治療が大切なのです。
1型糖尿病は現時点で完治させる方法がありません。
しかし、膵臓の移植や再生医療などの研究が進められており、いずれは完治できるようになるかもしれないと期待されています。
Q.糖尿病は男性と女性で症状に違いがある?
A. 性別による症状の違いはありません。
一つ、女性特有の注意点としてお答えすると、更年期症状と糖尿病の症状が似ているために、糖尿病の発見が遅れてしまうことが挙げられます。
一般的に糖尿病は40歳を過ぎると増え始めますが、更年期症状が出始める年齢とも重なるため、「更年期症状だと思っていたら糖尿病だった」と発見が遅れてしまうことがあるのです。
「のどの渇き」や「疲労感」など、似ている症状があるため注意しておきましょう。
Q.元々糖尿病の人が妊娠した場合の影響は?
A. 普段よりも血糖値が上がりやすくなりますが、きちんと血糖コントロールすれば母体や胎児に影響なく出産できます。
ただし妊娠前から糖尿病合併症がある場合や、妊娠初期から高血糖の状態が続いてしまうと、胎児に影響がでる恐れがあるため気をつけなければいけません。
妊娠をする前に合併症の検査を受けたり、内服薬からインスリン療法に切り替えるなど、さまざまな準備が必要になります。
妊娠を希望する場合は、医師から妊娠の許可をもらってから妊娠したほうが良いでしょう。