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フォシーガの心不全への効果|作用機序や注意点
フォシーガは2型糖尿病の薬ですが、最近では慢性心不全への効能・効果が承認されています。
実際に2020年に慢性心不全に対しての適応が追加されて以来、現在の医療現場で使用されています。
では、なぜ糖尿病治療薬として開発されたフォシーガが心不全の治療に使用されるようになったのでしょうか?
この記事では、フォシーガの心不全への作用機序について詳しく解説し、この疑問にお答えしていきます。
またフォシーガを飲むときの注意点についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
フォシーガはなぜ心不全の治療に使われるのか
フォシーガには、心不全患者の心機能を助けて心臓を守る効果があります。
心臓は通常、拡張と収縮を繰り返しますが、心不全の人は血液を送り出すことが難しくなり心臓が拡張します。
この負担を軽減することがフォシーガの特長です。
心不全になると、心臓のポンプ機能が低下して体全体に十分な量の血液を送り出せなくなります。さらに、全身の血液が心臓に戻る機能も低下し、血液が滞るうっ血が起こります。
これにより、必要な酸素や栄養が全身に行き届かなくなるため、息切れやむくみなどの症状が出て日常生活に支障が出ます。
フォシーガは、心臓の負担を軽減することでこのような症状を緩和させると期待されているのです。
では、具体的にどの部位に働いて効果を発揮しているのでしょうか?
次項から、心不全におけるフォシーガの働きについて詳しく解説していきます。
また、フォシーガは心不全だけでなく腎臓病の治療でも使用されています。
腎臓への効果については別の記事で詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
フォシーガの心不全への作用機序
フォシーガは、下記の部位に働きかけて心不全への効果につなげています。
①心臓
②腎臓
③血管機能
部位ごとにどのようにフォシーガが働くのか、ひとつずつ解説します。
①心臓への働き
フォシーガは、心臓の炎症を抑制し、心機能を改善する作用があります。
心不全では、線維芽細胞という炎症を起こす機能を持つ細胞が過剰に増殖することで、細胞外マトリックスという物質が増加し心機能に悪影響を及ぼすことがあります。
フォシーガには免疫細胞であるマクロファージを増加させる効果があるため、線維芽細胞の増殖を抑え、細胞外マトリックスを減少させるのです。
これにより、フォシーガは心臓に直接作用して炎症を抑制し、心機能に良い影響をもたらすことが確認されています。
②腎臓への働き
フォシーガは、腎臓で行われる糖の再吸収という工程を抑制し、尿に糖が排出されないようにする体内の働きを阻止します。
この工程が抑制されると糖が尿から排出されるようになり、糖とともに水分も一緒に排出されるため尿量が増加します。
これにより体内の水分量や血液量が減少し、心臓の負担軽減やうっ血の改善につながるのです。
その結果、フォシーガの腎臓への働きは、間接的に心不全を改善する効果になっています。
③血管機能への働き
フォシーガは、血管の機能を正常に維持し、腎臓や心臓の健康を保つ作用があります。
フォシーガは、糖だけではなくナトリウム(塩分)の再吸収も抑制するため、尿細管内でナトリウムが増加し輸入細動脈という血管が収縮します。
輸入細動脈は、腎臓にある、糸球体という血液中の老廃物や塩分をろ過して尿を作る毛細血管に向かっています。
この輸入細動脈が収縮することで糸球体内の圧力が下がり、糸球体における過剰ろ過を抑制して腎臓を保護しているのです。
また、フォシーガには、動脈硬化を改善する可能性があるともいわれています。
フォシーガによって血管の機能が正常に維持されることで、長期的に見ても腎臓や心臓の健康を保つことにつながっています。
フォシーガの副作用と心不全患者の注意点
フォシーガの副作用は以下の通りです。
・脱水
フォシーガと利尿剤を併用している場合、利尿作用が増強され脱水状態になる可能性があります。
脱水予防のためには適度な水分補給が望ましいですが、重症心不全、腎機能障害、低ナトリウム血症の人は水分摂取量に制限が必要な場合があります。
当てはまる人は、必ず医師の指示通りに水分補給を行ってください。
・ケトアシドーシス
ケトアシドーシスは、脱水状態や糖質の摂取不足が原因で発症し、激しい喉の渇き、全身倦怠感、吐き気や嘔吐、意識障害などが症状として出ます。
ケトアシドーシス予防のため、食事を摂れないほど体調が悪いときはフォシーガを休薬しましょう。
・性器感染、尿路感染
フォシーガの、尿から糖を排出する働きにより、性器感染症や尿路感染症を起こす可能性があります。
予防するためには、十分に水分補給を取りトイレを我慢しない、陰部を清潔に保つなどの対策が必要です。
副作用の詳しい症状や上記以外の副作用については、こちらの記事で詳しく解説しています。
フォシーガは糖尿病でなくても投与可能
フォシーガは糖尿病治療薬ですが、糖尿病ではない心不全の患者に対しても適応可能です。
現在は、心不全治療において最優先で使用すべき4つの治療薬の1つに選ばれています。
フォシーガが分類されるSGLT2阻害薬が心不全の治療薬として承認されたのは2020年とまだ最近のことです。
それにもかかわらず、SGLT2阻害薬はすでに従来から心不全の治療薬として使用されていたARNI、β遮断薬、MRAとともに心不全治療薬のファンタスティック4と称されています。
ファンタスティック4とは、上記4つの治療薬が、心不全早期における使用で生命予後を延ばすと期待されていることから、"素晴らしい4剤"という意味を込めて呼ばれている名称です。
このようにフォシーガは、その効果の高さと安全性から、心不全治療において積極的に使用することを推奨されています。
ちなみに、フォシーガと同じくSGLT2阻害薬に分類され、心不全への効果が認められている2型糖尿病治療薬にジャディアンスがあります。
ジャディアンスの心不全への効果については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
糖尿病の薬を飲んで低血糖にならない?
「糖尿病ではない人が糖尿病の薬を飲んでしまうと、低血糖になってしまうのでは?」と不安になる人も多いでしょう。
しかし、フォシーガの場合、体内に必要な糖は残し、不要な糖のみ排出する医薬品であるため低血糖は起こしにくいとされています。
ただ手術などで絶食する場合は休薬が必要です。
手術前のいつから休薬し、術後はいつから飲んでいいのかなどは、必ず医師の指示に従ってください。
まとめ
フォシーガの心不全への効果について、ここまで解説したことをまとめました。
- フォシーガは心臓の炎症を抑え、心機能を改善する
- 利尿作用により、心臓の負担が軽減される
- 血管の機能を正常に維持し、腎臓や心臓の健康を保つ
- 副作用に脱水のリスクがあり適度な水分補給が望まれるが、水分摂取量に制限のある人は医師の指示通りに水分補給をおこなう
フォシーガの副作用やリスク、使用する上での注意点について理解したうえで安全に使用し、治療に役立てましょう。
Q&A
フォシーガと心不全に関連してよくある質問にお答えしていきます。
Q.心不全治療でのフォシーガの投与量は?
A.心不全の治療においては1日1回10mgを投与します。
糖尿病治療では1日1回5mgから投与し、効果が不十分の場合に10mgに増量するため、5mgと10mgの錠剤があります。
Q.フォシーガの糖尿病治療薬としての効果は?
A.食事で摂取した余分な糖を尿と一緒に排出することで、血糖値の上昇を抑える効果があります。
1型糖尿病、2型糖尿病どちらも適応可能です。