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フォシーガの腎臓への効果
糖尿病の薬として開発されたフォシーガですが、実は慢性腎臓病の治療にも使用されています。
「糖尿病の治療薬なのに、なぜ腎臓病の治療にも使われているのか」
「別の分野の治療薬を使うことで、なにか副作用が出てしまうのではないか」
「糖尿病の治療薬を飲んで腎臓に負担はかからないのか」
などの疑問や不安を感じる人も多いでしょう。
そこで今回は、フォシーガの腎臓への効果を詳しく徹底解説し、これらの疑問にお答えしていきます。
フォシーガが腎臓にもたらす効果
フォシーガには、腎臓の負担を軽減し腎機能を保護する効果があります。
その効果から、腎臓病治療に有益であるとして実際に医療現場で使用されるようになりました。
腎臓病とは腎臓の機能が急激に低下し、老廃物がうまく排出されなくなった状態のことです。
腎臓は、毎日150リットルもの血液を濾過し、尿をつくっています。
しかし、腎臓が悪くなると濾過できる血液の量が減るため、尿中に排出できなくなった老廃物が体内にたまってしまいます。
腎臓病が進行し重症になると、老廃物を排出するために透析が必要になることもあります。
そんな腎臓病に対し、フォシーガは腎機能を正常に維持する働きをもたらすことで進行を遅らせる効果を発揮しているのです。
では、フォシーガが腎臓にどう作用しているのか、次項で具体的に説明していきます。
フォシーガの腎臓への作用機序
フォシーガは、腎臓の尿細管でおこなわれる糖やナトリウム(塩分)の再吸収を抑制することで、腎臓病治療に効果を発揮しています。
再吸収とは、体に必要な成分を尿として排出されないように再び血液に戻す工程のことです。
正常な尿細管は、糖やナトリウムを体に必要なものと考え、ろ過された原尿のうち約99%の成分を血液に再吸収するためフル稼働しています。
しかし、フォシーガによって再吸収が抑制されることで、尿細管の負担は軽くなるのです。
また、再吸収の抑制によって尿細管内のナトリウム濃度が上昇し、糸球体の働きも調節されます。
糸球体とは、血液中の老廃物や塩分を濾過して尿をつくる毛細血管の集合体です。
この糸球体の働きが正常に調節されると、糸球体の血圧が下がり、腎臓が保護される効果が現れます。
以上のことから、フォシーガの持つ糖やナトリウムの再吸収を抑制する働きが腎臓にとって有益な効果をもたらしていることが分かりました。
なお、腎機能の維持は、心臓の健康を保つことにもつながっています。
実はフォシーガは、腎臓病だけでなく心不全治療にも役立てられているのです。
フォシーガの心不全への効果についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、興味のある人はぜひご覧ください。
フォシーガの副作用と腎臓病患者の注意点
ここまでフォシーガの効果について解説しましたが、フォシーガにも副作用のリスクはあります。
フォシーガには、以下の副作用リスクがあります。
・脱水
・低血糖
・性器感染、尿路感染など
フォシーガには、利尿作用や血糖降下作用があります。
そのため、同じ作用のある医薬品と併用する場合は、上記の副作用のリスクが高まる場合もあるので注意が必要です。
また、通常であれば脱水を予防するために適度な水分補給が重要となるのですが、腎臓病の人の場合は摂取する水分量を控えなければならない場合があります。
医師の指示を受けている人は、必ずそれに従って水分量を調節してください。
より詳しい副作用の症状や、上記以外の副作用については別の記事で詳しく解説しています。
医薬品を使用する上で副作用について知っておくことはとても大切ですので、ぜひあわせてご覧ください。
フォシーガで起こる一時的な腎機能低下
腎臓の負担を減らし、保護する効果のあるフォシーガですが、フォシーガを飲み始めた段階で一時的に腎機能が低下することもあります。
腎機能検査の項目であるクレアチニン(体に不要な老廃物)とeGFR(老廃物を尿へ排出する能力)の数値が、フォシーガの飲み始めの初期に一時的に悪化することがあるのです。
ただし、これは一過性であり、フォシーガを飲み続けていれば腎臓病の進行を抑制することができるということが分かっています。
不安に感じた人も、安心して飲み続けてください。
腎臓病でもフォシーガが飲めない人
腎臓病がかなり進行してしまっている場合はフォシーガを飲むことができません。
腎臓病の中で最も重篤である末期腎不全の人や、人工的に血液の老廃物を取り除く透析を行っている人などが、フォシーガの適応外となります。
また、eGFRの数値が25mL/min/1.73m2未満の人も、フォシーガを飲むことで一時的に腎機能が低下するリスクがあるため飲むことができない場合があります。
フォシーガを使用するかどうかは、腎臓病の進行具合や副作用のリスクを踏まえた医師の判断によって決まるため、腎臓病であれば誰でも適応されるというわけではないのです。
フォシーガの幅広い有効性
フォシーガの有効性が期待されているのは、腎臓病や心不全だけではありません。
フォシーガは、以下の疾患への効果も期待されています。
・痛風
フォシーガは尿酸を尿の中に排出する働きを持ち、この働きにより血液中の尿酸値を下げることがわかりました。
尿酸値が下がることによって痛風の発症リスクを下げることができます。
・腎臓結石
フォシーガには抗炎症作用があるとされ、腎臓での結石形成を抑制するという研究結果が挙がりました。
このことから、フォシーガは尿路結石症の治療薬になる可能性があるのではないかと大きく期待されています。
フォシーガは糖尿病や腎臓病、心不全の治療だけにとどまらず、さまざまな可能性を持った医薬品といえるでしょう。
まとめ
フォシーガの腎臓への効果について、この記事で解説したことをまとめました。
- 腎臓の再吸収を抑制するため、腎臓の負担軽減、腎機能保護の効果を得ることができる
- 脱水や低血糖の副作用リスクがあり、利尿薬や血糖降下作用のある薬と併用する人は注意する
- 服用初期に腎機能が低下することがあるが一時的で、その後は腎臓病の進行を抑えることができる
腎臓病の人は必ず医師の指示に従って、正しい使い方でフォシーガを治療に役立ててください。
Q&A
フォシーガと腎臓に関連してよくある質問にお答えしました。
Q.SGLT2阻害薬とは?
A. SGLT2という腎臓の再吸収で働く物質を阻害することで尿中に糖を排出し、血糖値を下げる医薬品のことです。
フォシーガやジャディアンス、カナグルがSGLT2阻害薬に該当します。
またSGLT2阻害薬は、食事から摂取した余分な糖を排出できることから、ダイエット目的で飲んでいる人も増えてきています。
フォシーガのダイエット効果については別記事でまとめていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
Q.糖尿病のない腎臓病患者でもフォシーガは適応される?
A. フォシーガは糖尿病がなくても、慢性腎臓病の治療として保険適応されます。
ただし、フォシーガと同じSGLT2阻害薬で腎臓への効果が認められているカナグルは、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病への保険適応となります。