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ジャディアンスと心不全の関係を解説
ジャディアンスについて調べると「心不全」という関連ワードが出てきます。
それによって、「ジャディアンスによって心不全になるの?」と不安に思う人もいるかもしれません。
しかし、ジャディアンスによって心不全になるわけではないので安心してください。
ジャディアンスは慢性心不全への効果が認められている医薬品です。
また、ジャディアンスは2型糖尿病治療やダイエットにも活用されています。
そのため、心不全でない人が飲んでも健康に害はありません。
この記事では、ジャディアンスの慢性心不全への効果、作用機序、注意点などについて解説していきます。
ジャディアンスの慢性心不全治療における効果
ジャディアンスは慢性心不全への効果が認められ、治療に使用されています。
ジャディアンスの慢性心不全への効果は、2つの臨床試験で検証されました。
対象となったのは、左室駆出率が低下した慢性心不全の人と、左室駆出率が保たれている慢性心不全の人です。
どちらも試験でも他の慢性心不全の治療にジャディアンス10mgを追加して飲んだ場合、心血管死や心不全による入院が20~30%減ったという結果が報告されました。
この結果を受け、ジャディアンスは2022年に左室駆出率を問わない慢性心不全の治療薬として適応追加されています。
なお、ジャディアンスによる治療は2型糖尿病を合併していない慢性心不全の人にも有効です。
では、ジャディアンスのどのような作用によって慢性心不全への効果をもたらしているのでしょうか。
次の項目で作用機序について解説します。
ジャディアンスの慢性心不全に対する作用機序
ジャディアンスの慢性心不全に対する作用機序は、まだ明らかになっていない部分もあります。
しかし、ジャディアンスのナトリウム再吸収を抑制する働きにより、生理的機能に変化を及ぼすことが長期的に心不全を抑制することにつながるのではないかと考えられています。
ナトリウムの再吸収が抑制されると、下記のような要素から排泄や血液の循環といった生理的機能に変化を及ぼします。
・尿細管糸球体のフィードバックの増加
・心臓の前負荷と後負荷の減少
・交感神経活性の低下
また、ジャディアンスの内皮機能に対する直接的作用、ケトン体供給による代謝への作用と酸化ストレス、炎症の抑制も慢性心不全に対する作用に貢献している可能性があります。
慢性心不全とは
慢性心不全とは、心不全が慢性的に続く状態のことです。
心不全では心臓の構造や機能の障害によって心臓のポンプ機能が低下します。
すると、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなってしまうのです。
心不全はひとつの疾患ではなく、心臓のさまざまな疾患(心筋梗塞、弁膜症、心筋症など)や高血圧などにより負担がかかった状態が最終的に至る一連の症状です。
心不全は、糖尿病や高血圧などの要素と遺伝的素因が重なることで発症します。
完治はなく予後も不良のため、発症しないように予防することが重要です。
慢性心不全の標準治療では、ACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬などを使用した薬物治療がおこなわれます。
ジャディアンスは慢性心不全の標準治療へ追加することで、左室駆出率を問わず効果が望めます。
ちなみに、左室駆出率とは心臓の機能を評価する指標のひとつです。
心臓が送り出す血液量と左室容積から算出される割合のことをさします。
慢性心不全治療でのジャディアンスの飲み方
慢性心不全の治療では、通常10mgを1日1回朝食前または朝食後に飲みます。
さらに、2型糖尿病と慢性心不全を合併している人に対しては25mgへの増量が可能です。
ただし、これは血糖コントロールの改善が目的の場合に限られており、10mgで効果が不十分なときは経過を十分に観察しながら増量します。
なお、慢性心不全の治療に対しては1日10mgを超える量を飲む場合の有効性は確認されていません。
そのため、25mgへの増量はしないでください。用量を守り安全に使用しましょう。
また、ジャディアンスは2型糖尿病や慢性心不全を患っていない健康な人も飲める医薬品です。
そのため、ダイエット目的で活用されることもあります。
ジャディアンス10mgと25mgの違いについては別の記事で詳しく解説しています。こちらもあわせてお読みください。
ジャディアンスを飲むときの注意点
ジャディアンスを飲むときは、飲む量を守ることや他の医薬品との併用などに注意が必要です。
特定の医薬品との併用や飲む量を守らないことで、副作用を起こしやすくなったり症状が悪化したりする可能性があります。
なお、ジャディアンスには下記のような副作用があります。
・低血糖
・脱水
・尿路感染症、性器感染症など
副作用のひとつである脱水は、こまめな水分補給をして予防することが必要です。
ただ、慢性心不全の場合は過度な水分補給は心不全の症状を悪化させてしまいます。
そのため、医師から指導された水分量を守りつつ脱水を引き起こさないよう水分補給をおこないましょう。
他の医薬品との併用について
ジャディアンスと他の医薬品の併用には注意が必要な場合があります。
ジャディアンスの併用注意薬は下記の通りです。
薬品名 | 理由 |
---|---|
糖尿病治療薬 | 血糖値を下げる作用が強くなり、低血糖が起こる可能性があるため |
スルホニルウレア剤 | |
速攻型インスリン分泌促進薬 | |
α-グルコシターゼ阻害薬 | |
ビグアナイド系薬剤 | |
チアゾリジン系薬剤 | |
DPP-4阻害薬 | |
GLP-1受容体作動薬 | |
インスリン製剤など | |
血糖降下作用を増強する医薬品 | 血糖値を下げる働きが強くなり、低血糖が起こる可能性があるため |
β遮断薬 | |
サリチル酸剤 | |
モノアミン酸化酵素阻害薬など | |
血糖降下作用を弱める医薬品 | 血糖値を下げる働きが弱くなるため |
アドレナリン | |
副腎皮質ホルモン | |
甲状腺ホルモンなど | |
利尿薬 | 利尿作用が強くなるため |
チアジド系薬剤 | |
ループ利尿薬など | |
リチウム製剤 | リチウムの腎排泄が促され、リチウムの作用が弱くなる可能性があるため |
炭酸リチウム |
これらの医薬品を併用することによって、副作用を引き起こしやすくなったり、安定した治療効果が得られなくなったりする可能性があるのです。
ただし、ジャディアンスに併用禁忌薬はありません。
なお、ダイエット目的でジャディアンスを飲む場合、併用することでより高いダイエット効果が期待できる医薬品もあります。
これは、ビグアナイド系に分類される糖尿病治療薬のメトホルミンなどが挙げられます。
メトホルミンとの併用については別の記事で詳しく紹介しているので、ダイエットに興味がある人はあわせてご覧ください。
まとめ
ジャディアンスと心不全の関係についてのポイントをまとめました。
- ジャディアンスで心血管死と心不全による入院が減ったため慢性心不全への効果が認められた
- ジャディアンスの慢性心不全への作用機序は明らかになっていない部分もある
- 尿細管糸球体のフィードバックの増加、心臓への負荷の減少、交感神経活性が低下するなどの要素が心不全の抑制につながると考えられている
- 飲むときは正しい飲み方を守ることと他の医薬品との併用などに注意が必要
ジャディアンスに限らず、全ての医薬品には副作用はあります。
医薬品の効果や働きだけでなく、副作用などのリスクについても理解したうえで、正しい知識のもとで安全に使用しましょう。
Q&A
ジャディアンスと心不全についてのよくある質問にお答えします。
Q.ジャディアンスと利尿剤を併用するとどうなる?
A.ジャディアンスと利尿薬を併用すると、利尿作用が強くなる可能性があります。
ジャディアンスには利尿作用があり、これは余分な糖を尿から排出する働きによるものです。
そのため、他の利尿薬との併用で利尿作用が強くなることが考えられます。
利尿作用が強くなると、脱水や糖尿病性ケトアシドーシス、脳梗塞を含む血栓・塞栓症などを引き起こす場合があるため注意が必要です。
Q.ジャディアンスは透析患者に使えますか?
A.ジャディアンスは透析中の末期腎不全の人には使いません。
使用しない理由は、末期腎不全や高度腎機能障害がある場合はジャディアンスの効果が期待できないからです。
Q.ジャディアンスの禁忌は?
A.ジャディアンスの禁忌は下記の通りです。
・ジャディアンスの成分に対する過敏症の既往歴がある人
・重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡の状態にある人
・重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある人
禁忌事項に該当する人はジャディアンスを飲めません。
そのため、ジャディアンスを飲む前に自分は禁忌に該当しないかを確認する必要があります。