更新日:
ジャディアンスによる下肢切断リスクはないが合併症に注意
ジャディアンスは、2型糖尿病治療やダイエットに活用されているSGLT2阻害薬のひとつです。
ジャディアンスについて調べると「下肢切断」という関連ワードが出てきます。
これは、ジャディアンスによる下肢切断リスクの増加が懸念されたためであると考えられます。
ただし、ジャディアンスによって下肢切断リスクが増加するという十分な根拠はありません。
では、なぜ下肢切断リスクの増加が懸念されたのでしょうか?
この記事では、下肢切断リスク増加が懸念された理由や下肢切断につながる合併症などについて解説していきます。
ジャディアンスによる下肢切断リスク増加が懸念された理由
ジャディアンスによる下肢切断リスク増加が懸念された理由は、別のSGLT2阻害薬で下肢切断リスクが増加するという報告が上がったからです。
下肢切断リスクの増加が報告されたのは、カナグリフロジンです。
そこで、ジャディアンスを2年以上の長期間使用する複数の臨床試験の結果をもとに下肢切断リスクについての調査がおこなわれました。
この臨床試験は、心血管イベントの有無や左室駆出率を問わず2型糖尿病と慢性心不全の患者さんを対象におこなわれています。
結果は、下肢切断に関連する有害な反応はあったもののジャディアンスが直接の原因とは断定できませんでした。
したがって、ジャディアンスによる下肢切断リスクの増加は認められないとされます。
しかし、カナグリフロジンによる下肢切断リスク増加のメカニズムはすべてのSGLT2阻害薬と一致するか明らかになっていません。
そして、ジャディアンスでの臨床試験の件数と期間に限りがあることからも下肢切断はジャディアンスの重要な潜在的リスクとされました。
なお、ジャディアンスを使用して治療する2型糖尿病は合併症によって下肢切断に至る可能性があります。
カナグリフロジンによる下肢切断リスク
カナグリフロジンは、ジャディアンスと同じSGLT2阻害薬に分類される2型糖尿病の治療薬です。
カナグリフロジンの一般名はカナグルです。
ダイエット目的で飲まれることもあるため、カナグルの方が耳馴染みのある人もいるかもしれませんね。
カナグリフロジンの下肢切断リスクは、海外での2型糖尿病患者さんを対象とした臨床試験において確認されました。
この試験では、カナグリフロジンを飲んだ人は下肢切断の発現頻度が高かったという結果が出ています。
ただし、下肢切断に至る機序がすべてのSGLT2阻害薬で一致するかは明らかになっていません。
なお、ダイエット目的で飲まれるSGLT2阻害薬はジャディアンス、カナグリフロジンの他にもフォシーガがあります。
それぞれの医薬品の違いについてはこちらの記事で紹介しています。
ダイエットに効果的な医薬品に興味がある人はあわせてお読みください。
糖尿病による下肢切断リスク
糖尿病の人は、糖尿病ではない人に比べて下肢切断に至るリスクが高くなります。
これは糖尿病の場合、神経障害や血流障害による合併症などによって糖尿病足病変が起こりやすいからです。
糖尿病足病変とは、糖尿病の人に起こる足の症状の総称です。
足病変がある状態で、やけどや靴擦れなどの怪我を負うと、感染症や潰瘍を引き起こします。
感染症や潰瘍が進行すると、壊疽(組織が腐ってしまうこと)が起こり切断に至る場合もあるのです。
また、糖尿病は感染症にかかりやすく、治りにくいという特徴もあります。
その理由は主に下記の要因が挙げられます。
・血糖値が高くなることで白血球や免疫に関わる細胞の機能が低下する
・神経障害や血流障害によって感染症が重症化しやすい
このように、糖尿病の場合は感染症にかかりやすく治りにくいことや神経障害、血流障害の要因から下肢切断に至るリスクが高くなるのです。
切断を回避するためには、日頃から怪我をしないように気を付けることやフットケアなどによる予防が重要です。
なお、糖尿病治療については別のページで詳しく解説しています。こちらもあわせてお読みください。
糖尿病による下肢切断の予防法
糖尿病による足の切断を回避するためには、足病変が起こらないように予防することが重要です。
日頃からフットケアをおこない、足の状態をよく観察して異変に早く気付くことが大切になります。
フットケアの具体的な方法は下記の通りです。
・自分の足に合った靴を履く
足に合わない靴は靴擦れや足の変形の原因になります。
・やけどに注意する
糖尿病の場合、熱さに鈍感になるため低温やけどに注意が必要です。
・足を清潔に保つ
感染予防に重要です。
・爪を正しく切る
伸びた爪や深爪は怪我や感染の原因になります。
普段からしっかりケアをして、変化を見逃さないように心がけましょう。
そして、糖尿病自体を悪化させないようにすることも重要です。
まとめ
ここまでにお伝えしたことのポイントをまとめました。
- ジャディアンスによる下肢切断リスクの増加は十分な根拠がなく認められていない
- 下肢切断リスクが懸念されたのは同じSGLT2阻害薬のカナグリフロジンで下肢切断リスク増加が報告されたから
- 下肢切断リスク増加の機序はジャディアンスと一致するか定かでなくジャディアンスによる下肢切断は重要な潜在的リスクとされた
- 糖尿病の人は足病変を起こしやすく進行すると切断に至る場合もある
- フットケアなどで予防することが大切
Q&A
ジャディアンスと下肢切断についてのよくある質問にお答えします。
Q.糖尿病患者は下肢切断のリスクが高い?
A.糖尿病の人が下肢切断に至るリスクは高いです。
糖尿病の人とそうでない人と比較すると、足の切断リスクは9.5~14.5倍高くなるという調査結果もあります。
糖尿病の場合、神経障害や血流障害、感染症にかかりやすく治りにくいことなどが下肢切断に至る要因となります。
Q.ジャディアンスの主な副作用は?
A.ジャディアンスの主な副作用は下記の通りです。
・頻尿
・低血糖
・口の渇き
・便秘など
そして、特に注意が必要な副作用は低血糖、脱水、尿路感染症、性器感染症です。
これらはジャディアンスの特徴的な副作用で、悪化すると命に関わることもあります。
そのため、ジャディアンスを飲んでいるときは体調の変化を見逃さないようにしましょう。