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メトホルミンとアルコール量の許容範囲を解説

メトホルミンとアルコール量の許容範囲を解説

メトホルミンと過度のアルコール摂取は禁忌です。

とはいえ仕事の付き合いでアルコールを飲む人や、アルコールが好きで飲酒の習慣がある人はなんとかしたいとお考えではないでしょうか。

そこで「どのくらいの量までならアルコールを飲めるのか」、「飲み会の何時間前から何時間後まで休薬すれば良いのか」飲酒するときに気をつけるべきポイントを解説していきます。

メトホルミンとアルコール量の上限

アルコールを飲む場合、直前のメトホルミンは1回分休薬しましょう。
すでにメトホルミンを服用してしまったときは、アルコールと同量以上の水を飲むように心がけてください。

適度な飲酒量として考えられているアルコール摂取量の上限は、男性の場合1日20g~25g程度です。
女性はアルコール代謝能力が低いため、半量の10~15g程度が望ましいとされています。

主なお酒のアルコール量は下の表にまとめました。

アルコール度数 純アルコール量
ビール
(中瓶1本500ml)
5% 20g
日本酒
(1合180ml)
15% 22g
焼酎
(1合180ml)
35% 50g
ウィスキー・ブランデー
(ダブル60ml)
43% 20g
ワイン
(1杯120ml)
12% 12g

お酒のラベルに記載されているアルコール度数は、普段から目にする人が多いと思いますが、アルコール量はグラムで表されるため、下記の計算方法を参考にしてください。

飲んだお酒の量(ml)×アルコール度数(%)×0.8

例:ウィスキーを60ml飲んだ場合
ウィスキー60ml×アルコール度数43%×0.8=20.6g

なお、メトホルミンを飲んでいなくても2型糖尿病患者のアルコール摂取限度は1日25gまでとされています。

上記で解説した内容はあくまで目安です。飲酒の適量には個人差があります。
体調や過去・現在にかかっている糖尿病以外の疾患、飲酒習慣などによって変わるため注意してください。少しでも不安がある人は、お酒を飲むのを控えましょう。

アルコール以外のメトホルミンの禁忌については、別の記事で解説しています。下のリンクからご確認ください。

メトホルミンと過度のアルコールが禁忌の理由

メトホルミンと過度のアルコールが禁忌の理由

メトホルミンと一緒に大量のアルコールを摂取すると、下記のリスクがあるため禁忌とされています。

・重度の低血糖
・乳酸アシドーシス

メトホルミンとアルコールを一緒に飲むと、著しく血糖値が下がり、重度の低血糖発作になるケースがあります。
アルコールを飲むと一時的に血糖値が上がりますが、さらに飲みすぎると肝臓がアルコール代謝に追われ、血液中の糖が不足して低血糖を起こしやすくなります。
また、アルコールの飲み過ぎによって血糖コントロールが乱れることも、メトホルミンとアルコールが禁忌とされる理由です。

そしてメトホルミンの重大な副作用である乳酸アシドーシスは、アルコールによる脱水状態や、肝機能の低下によって引き起こされます。下痢や吐き気などの消化器症状から始まり、重症化すると命を落とすこともあります。
しかし重大な副作用といっても、飲酒の適量を守っていれば心配する必要はありません
過去にメトホルミンとアルコールの併用によって乳酸アシドーシスを発症した事例は、イギリスに1件とオランダに1件だけです。

乳酸アシドーシスについては別の記事で詳しく解説していますので、下記リンクをご参考ください。

メトホルミンとアルコールが抜ける時間

メトホルミンとアルコールの間隔

メトホルミンは、19時間ほどで効果が消滅するといわれています。
アルコールが体内から抜けるまでの時間は、ビール500mlでおよそ3時間半~5時間が目安です。

医薬品は、服薬してから血液中の濃度が半分に減るまでの時間を「血中濃度半減期」と呼び、投与間隔を決める目安としています。
メトホルミンの場合、血中濃度半減期は3~4時間です。
そのため、メトホルミンとアルコールの間隔は最低でも男性なら飲酒の前後3時間女性なら4時間以上は空けた方が良いでしょう

メトホルミンに限らず、医薬品とアルコールを一緒に飲むことは厳禁です。
時間を空けずに服薬すると、医薬品の効果が下がってしまう可能性や、逆に効果が出過ぎてしまうことがあります。

やむを得ずアルコールを摂取する場合は、少なくとも前後1時間程度は空けてからメトホルミンを飲みましょう。

メトホルミンを飲んでいる人におすすめのお酒とおつまみ

メトホルミンを飲んでいる人におすすめのお酒とおつまみ

お酒やおつまみを選ぶ際は、糖質に注目しましょう。糖質が多いと、血糖値が上昇して太りやすくなってしまいます

おすすめのお酒は下記の通りです。
・焼酎
・ウィスキー
・ウォッカ
・ジン

蒸留酒やスピリッツ類は糖質が少なくおすすめです。
ただし割り物には注意してください。ジンジャーエールやコーラなど砂糖が入っているものではなく、無糖のもので割りましょう。

おつまみも、下記のような低糖質のものがおすすめです。
・枝豆
・チーズ
・キムチ
・豆腐
など
定番メニューのフライドポテトやポテトサラダなどのイモ類は、糖質が多いので食べ過ぎに注意が必要です。
また、先に食物繊維が豊富な野菜から食べるようにしましょう。消化吸収が緩やかになって、急激な血糖値の上昇を防ぐことができます。

メトホルミンと組み合わせてはいけない食品については、飲み合わせの記事で解説しています。食事をする際の参考にしてください。

アルコールを飲むときに注意すること

・空腹でアルコールを飲まない
空腹のままアルコールを飲むと、低血糖になる恐れがあります。食事を終えた後や、食事をしながらアルコールを楽しみましょう。

・アルコールと同量以上の水を飲む
脱水状態にならないよう、アルコールを飲むときはアルコールと同量以上の水を飲むようにしてください。脱水状態は副作用の乳酸アシドーシスを発症する恐れがあります。

繰り返しになりますが、メトホルミンと過度のアルコール摂取は禁忌です。アルコール量は必ず適量を守りましょう。
万が一、吐き気や嘔吐、腹痛などの症状や過呼吸などが出た場合はすぐに医師に相談してください。

糖尿病でもアルコールが飲める条件

下記の条件を満たしていれば、糖尿病と診断されていても適量内のアルコールを楽しむことができます。

①医師の許可が出ている
②血糖コントロールが良好である
③合併症がない
④肥満でない
⑤高血圧や動脈硬化がない、または軽度である
⑥適量を守る自制心がある
※肥満の人は適正体重にすることで血糖値が改善されることが多いです。体重と血糖値が安定するまではカロリーの高いアルコールは控えましょう。

これらの条件を満たしているからといって飲み過ぎは禁物です。血糖値が不安定になり、合併症のリスクが高まってしまいます。
糖尿病自体は血糖コントロールをうまく保てばすぐに命に関わるような病気ではありません。本当の恐ろしさは合併症を発症したときです。
次の項目で、糖尿病合併症について解説していきます。

糖尿病の人は合併症に注意

糖尿病を発症しているにも関わらず適量以上の飲酒を続けると、糖尿病合併症のリスクが高まります
糖尿病合併症とは、糖尿病が進行することによって起こる様々な疾患のことです。
血管や神経などの組織が長期間ダメージを受けることが原因とされています。
代表的な糖尿病合併症は下記の3つです。

・糖尿病腎症
糖尿病が原因で腎臓が傷んでしまうことで発症します。全身のむくみや尿毒症をきたし、透析療法が必要になります。

・糖尿病網膜症
糖尿病が原因で目の中の網膜が障害を受け、視力が低下する病気です。視力の低下や失明を招きます。

・糖尿病神経障害
手足のしびれや痛み、感覚の麻痺、発汗異常など様々な形で全身に現れます。進行すると無自覚性低血糖や突然死などのような深刻な状態になる可能性があります。

糖尿病合併症は、医師の指導を受けてきちんと血糖値をコントロールすれば予防できます
定期的な医療チェックを受け、普段から血糖値を正常にコントロールする心がけを持つことが大切です。
飲酒の許可が出ている場合は、必ず適量を守りましょう。

まとめ

メトホルミンとアルコールについて、ここまで解説した内容をまとめました。

  • アルコールの摂取量は1日あたり男性25g以下女性15g以下に抑える
  • メトホルミンに過度のアルコールが禁忌の理由は、重度の低血糖乳酸アシドーシス発症の危険性があるため
  • メトホルミンは飲酒の前後3時間以上空けてから飲むことが望ましい(女性は前後4時間以上)

メトホルミンに関するQ&A

Q&A

メトホルミンとアルコールに関連したよくある質問にお答えします。

Q.アルコールは糖尿病に良いと聞いたけど?

A.適量であればアルコールは2型糖尿病や糖尿病合併症の発症を抑えるとされています

ある調査では適度な飲酒をしていると血糖コントロールが良くなり、糖尿病合併症を引き起こすリスクが低くなるという報告や、2型糖尿病では適度なアルコール摂取の習慣がある人はまったくアルコールを摂取しない人に比べて心血管疾患などの死亡リスクは低いという結果が報告されています。

しかし、適量を超えてしまえば健康効果はありません
糖尿病や肥満、高血圧などの危険因子がある人は、アルコールの過剰摂取によって心不全などの発症リスクが高まるため注意してください。

Q.エナジードリンクと一緒に飲んでも良い?

A.アルコールとエナジードリンクを同時に摂るのは危険です。
エナジードリンクの興奮作用でアルコールの酔いがわからなくなり、無意識に多くのアルコールを摂取して急性アルコール中毒を引き起こす恐れや、利尿作用によって脱水症状がでる可能性があります。

また、メトホルミンとエナジードリンクは一緒に飲めるものの、糖尿病の人は注意が必要です。
エナジードリンクには多くの糖分カフェインが含まれています。
カフェインは過剰に摂取すると血糖値を高めるホルモンの分泌が促され、インスリンの機能を妨げるという報告があります。

エナジードリンクの常用は、糖尿病の発症や悪化のリスクが高まると問題になっています。飲みすぎることのないようにしましょう。

Q.ポカリはアルコールによる脱水に効果的?

A.ポカリなどのスポーツドリンクはアルコールによって失われる水分の補給に適してはいますが、糖質が多く含まれています。
スポーツドリンクは500mlあたり30g前後の糖質が含まれているため、少し飲んだだけでも血糖値が上昇します。普段から血糖値の高い糖尿病の人はなるべく避けた方が良いでしょう

熱くなった体を冷やしたいという場合でなければ、冷たい水よりも常温の水がおすすめです。体温に近い水は体に浸透しやすいといわれています。

Q.糖質ゼロのビールなら血糖値に影響しない?

A.糖質ゼロのビールでも、カロリーやアルコールが含まれていることによって少なからず血糖値に影響はあります。
ただ通常のビールと比べて糖質は低くなるため、ビール党の人にはおすすめです。
また、ノンアルコールビールもアルコールによる血糖の乱れが起こらないため良いでしょう。糖質量に注意して選んでください。

Q.タバコを組み合わせても問題ない?

A.メトホルミン服用中の喫煙は禁忌ではありません。
ただし、糖尿病の人がタバコを吸うと治療の妨げとなり、合併症のリスクを高めてしまうため注意してください。