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メトホルミンとトラゼンタは併用可能?配合剤や違いについても比較解説
メトホルミンとトラゼンタは、どちらも糖尿病治療薬で併用可能な医薬品です。
とはいえ、
「併用するとどんな効果がある?」
「メトホルミンとトラゼンタの配合剤はある?」
「2つの具体的な違いは?」
といった疑問をお持ちではないでしょうか。
そこで、この記事ではメトホルミンとトラゼンタの作用機序に基づいて、これらの疑問にお答えしていきます。
メトホルミンとトラゼンタの併用で得られる効果や、配合剤に興味がある人は、ぜひご一読ください。
メトホルミンとトラゼンタ併用で得られる効果
メトホルミンとトラゼンタを併用すると、相乗効果によって、血糖値を下げる効果が強くなります。
相乗効果が見込める理由は、メトホルミンとトラゼンタの異なる作用機序が合わさって血糖値を下げる効果を発揮するからです。
海外の研究で、トラゼンタを単体で飲む人とトラゼンタとメトホルミンを併用して飲む人のグループに分けて、24週間にわたり効果を観察する臨床試験がおこなわれました。
その結果、トラゼンタとメトホルミンを併用したグループの方が、HbA1c(約1~2ヵ月前の血糖コントロール状態を反映する指標)が低下したのです。
また、併用したグループでは体重が −1.3kg減少したという報告もあります。
この試験結果からもメトホルミンとトラゼンタを併用すると、相乗効果により血糖値を下げる効果が強くなることが分かります。
メトホルミンとトラゼンタ併用での飲み方
メトホルミンとトラゼンタを併用する場合の飲み方は以下の通りです。
・食前または食後に2つ一緒に飲む
・食前にどちらか1つを飲んで、食後にまだ飲んでいない方を飲む
なぜこの飲み方になるかというと、メトホルミンとトラゼンタを単体で飲む場合の飲み方が関係しています。
メトホルミンとトラゼンタを、それぞれ単体で飲む場合の飲み方は以下の通りです。
メトホルミン | トラゼンタ | |
---|---|---|
飲む回数 | 1日2~3回 | 1日1回 |
飲むタイミング | 食前または食後 | 指定なし |
メトホルミンは食前または食後に飲みます。
飲む量は、効果や副作用に合わせて調整できますが、1日に飲める量は最大2,250mgまでです。
一方、トラゼンタは飲むタイミングの指定がありません。
ただし、トラゼンタの効果を持続させるために毎日同じタイミングで飲むようにしてください。
飲み忘れが心配な人は、1日の最初にメトホルミンを飲むタイミングでトラゼンタも一緒に飲んでおきましょう。
または、1日の最初の食事の前と後に分けてメトホルミンとトラゼンタを飲むこともおすすめです。
そのため、メトホルミンとトラゼンタを併用するときは、メトホルミンを飲むタイミングにあわせて食事の前か後に2つ一緒に飲むか、食事の前と後で1つずつ飲みましょう。
メトホルミンとトラゼンタは食事しないときに飲んでいい?
メトホルミンとトラゼンタは、食事をしないときに飲むことは可能ですが、低血糖や消化器症状に注意が必要です。
メトホルミンとトラゼンタは、血糖値をさげる効果があるため、食事をしないで飲むと低血糖を引き起こす可能性があります。
特にメトホルミンは、空腹で血糖値が下がった状態のときに飲むと、低血糖だけではなく腹痛や下痢などの消化器症状も出やすくなるため、避けた方がよいでしょう。
トラゼンタは食事に影響されない医薬品のため、飲むタイミングの指定はありません。
しかし、食事量が少なかったり食事のタイミングが不規則だったりすると、低血糖を引き起こしやすくなるため注意が必要です。
メトホルミンとトラゼンタは、副作用を防ぐためにできるだけ3食しっかり食事を取って飲むことが望ましいのです。
そのため、メトホルミンとトラゼンタは食事をしないで飲むことはできますが、低血糖や消化器症状などの副作用に注意しましょう。
メトホルミンとトラゼンタの配合剤
海外では、メトホルミンとトラゼンタの有効成分が合わさって1錠になった配合剤のオンデロメットなどが販売されています。
配合剤のメリットは、1日に飲む回数や錠剤の数を減らせることです。
また、メトホルミンとトラゼンタの2つを併用して飲むよりも、配合剤で1錠にする方が費用を抑えられることもメリットとして挙げられます。
このようなメリットがあることから、メトホルミンとトラゼンタの有効成分が1つの錠剤に入ったオンデロメットなどの配合剤が販売されているのです。
メトホルミンとトラゼンタの違いを比較
メトホルミンとトラゼンタの違いは、以下の表の通りです。
2つの大きな違いとして、作用機序と飲み方が挙げられます。
メトホルミン | トラゼンタ | |
---|---|---|
分類 | ビグアナイド薬 | DPP-4 阻害薬 |
有効成分 | メトホルミン | リナグリプチン |
先発薬 | メトグルコ グリコラン メルビン |
トラゼンタ |
作用機序 | ・肝臓での糖新生を抑制する ・末梢組織(筋肉や脂肪など)での糖の取り込みを促進する ・腸管での糖の吸収を抑制する |
・DPP-4 を阻害してインクレチンの血中濃度を高め、インスリン分泌を促進する ・グルカゴンの分泌を抑制する |
飲み方 | 1日2~3回、食前または食後に飲む | 1日1回1錠を飲む |
作用機序と飲み方に大きな違いがある理由は、それぞれの有効成分に違いがあるからです。
メトホルミンの有効成分はメトホルミン塩酸塩、トラゼンタの有効成分はリナグリプチンで、どちらも血糖値を下げる効果があります。
メトホルミンは、肝臓での糖新生の抑制や末梢組織での糖の取り込みの促進、腸管での糖吸収の抑制など膵臓でのインスリン分泌を介さず血糖値を下げます。
一方リナグリプチンは、DPP-4 という酵素の働きを阻害することでインスリン分泌を促して血糖値を下げるのです。
また、トラゼンタは食事に影響されないため飲むタイミングの指定がありません。
このように、メトホルミンとトラゼンタは、作用機序と飲み方に大きな違いがあるのです。
次の項目で、メトホルミンとトラゼンタについてそれぞれ詳しく解説します。
メトホルミンとは
メトホルミンはビグアナイド系に分類される糖尿病治療薬で、2型糖尿病の治療に広く使用されています。
有効成分はメトホルミンで、先発薬にはメトグルコなどがあります。
メトホルミンは、以下の作用機序によって血糖値を下げる効果を発揮するため、2型糖尿病の治療で広く使用されているのです。
・肝臓での糖新生を抑制
・末梢組織(筋肉や脂肪など)での糖の取り込みの促進
・腸管での糖の吸収抑制
また、メトホルミンは、不妊の原因とされる多嚢胞性卵巣症候群の治療や、ダイエットにも活用されています。
なお、メトホルミンは単体で飲む場合は低血糖を引き起こしにくく、費用も安いため海外では2型糖尿病治療の第1選択薬として推奨されています。
そのため、メトホルミンは2型糖尿病の治療において広く使用されているのです。
トラゼンタとは
トラゼンタは、リナグリプチンを有効成分とした2型糖尿病の治療薬です。
DPP-4 阻害薬に分類されており、初めて2型糖尿病の治療をする人や高齢の患者さんに対する2型糖尿病治療にもよく使用されます。
なお、トラゼンタは先発薬です。
トラゼンタは以下の作用機序によって、血糖値下げる効果を発揮します。
・GLP-1(インクレチン)を分解するDPP-4 という酵素の働きを阻害し、GLP-1の血中濃度を高めることでインスリン分泌を促す
・DPP-4 を阻害して濃度が高まったGLP-1がグルカゴン分泌を低下させる
メトホルミンなど他の糖尿病治療薬と併用することも多いため、便利な配合剤も発売されています。
トラゼンタは、血糖値に合わせてインスリン分泌を促すため、血糖値が下がりすぎたことによる低血糖が起こりにくいです。
そのため、トラゼンタは様々な人の2型糖尿病の治療においてよく使用されているのです。
メトホルミンとトラゼンタの副作用
メトホルミンとトラゼンタには、以下のような副作用があります。
そのため、体調の変化を見逃さないように注意してください。
メトホルミン | トラゼンタ | |
---|---|---|
主な副作用 | 下痢 腹痛 吐き気など |
便秘 鼓腸 腹部膨満など |
重大な副作用 | 乳酸アシドーシス 低血糖など |
低血糖など |
メトホルミンとトラゼンタの副作用は、有効成分と作用機序に違いがあるため、症状も違います。
メトホルミンの主な副作用は下痢や腹痛などの消化器症状です。
そして、重大な副作用に乳酸アシドーシスがあります。
乳酸アシドーシスとは、血液中の乳酸が増えすぎて血液が酸性になった状態のことです。
非常に稀な副作用ですが、致死率が高い疾患のため速やかな治療が必要です。
また、トラゼンタの主な副作用は便秘、鼓腸、腹部膨満などです。
鼓腸とは腸の中にガスが充満している状態のことを指します。
なお、メトホルミンとトラゼンタの共通する副作用として低血糖があります。
それぞれを単体で使用する場合は、低血糖が起こる可能性は低いですが、併用した場合は、血糖値を下げる効果が強くなるため、低血糖を引き起こす確率が高くなるのです。
このように、メトホルミンとトラゼンタにはそれぞれ副作用があります。
したがって、メトホルミンやトラゼンタを飲んでいるときは、体調の変化をよく観察しておきましょう。
まとめ
ここまでに解説した、メトホルミンとトラゼンタについてのポイントをまとめました。
- メトホルミンとトラゼンタは併用可能
- 併用時や食事をしないで飲むときは低血糖のリスクが高くなるため注意が必要
- メトホルミンとトラゼンタの違いは、有効成分、作用機序、飲み方
- メトホルミンとトラゼンタには配合剤がある
メトホルミンとトラゼンタは、どちらも血糖値を下げる効果のある糖尿病治療薬ですが、作用機序に違いがあります。
どちらも併用しやすい医薬品のため、便利な配合剤も発売されています。
また、低血糖を引き起こしにくいため、初めて2型糖尿病の治療をする人や高齢の人など幅広く使用されているのです。
Q&A
メトホルミンとトラゼンタについてのよくある質問にお答えします。
Q.メトホルミンと併用できない薬は?
A. メトホルミンと併用できない医薬品はありません。
しかし、併用するときに注意が必要な医薬品は複数あります。
メトホルミンの併用注意薬は、以下のような医薬品です。
・副作用を引き起こしやすくなる医薬品
・血糖値を下げる作用を強める、または弱める医薬品
・メトホルミンの排泄を阻害するなど、その他の作用に影響する医薬品
メトホルミンには併用してはいけない併用禁忌薬はありませんが、併用注意薬と一緒にメトホルミンを使用する場合は、副作用や効果のあらわれかたに注意しましょう。
Q.トラゼンタ錠の禁忌は?
A. トラゼンタの禁忌は、以下の通りです。
・トラゼンタの成分に対し、過敏症の既往歴のある人
・1型糖尿病の人、糖尿病性昏睡または前昏睡、糖尿病性ケトアシドーシス
・手術前後、重症感染症、重篤な外傷のある人
これらの禁忌に該当する人は、トラゼンタを飲むことができません。
また、禁忌に該当していなくてもそのときの健康状態によっては飲めない場合もあるため、不安な場合は医師に相談しましょう。