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メトホルミンとテネリアの違いを比較|併用についても解説!
メトホルミンは、ビグアナイド系に分類される糖尿病治療薬で、テネリアはDPP-4阻害剤に分類される糖尿病治療薬です。
とはいえ、
「メトホルミンとテネリアには具体的にどんな違いがあるの?」
「2つは併用できる?」
といった疑問をお持ちではないでしょうか。
そこで、この記事では同じ糖尿病治療薬のメトホルミンとテネリアの違いを比較しながら、これらの疑問にお答えしていきます。
糖尿病治療薬に関心がある人は、ぜひ参考にしてください。
メトホルミンとテネリアの違いを比較
メトホルミンとテネリアはどちらも糖尿病治療薬ですが、違いとして効き方と、作用時間が挙げられます。
メトホルミンとテネリアの違いを、以下の表にまとめました。
メトホルミン | テネリア | |
---|---|---|
特徴 | 価格が安い | 肝臓と腎臓に作用する |
効果 | 血糖値を下げる | 血糖値を下げる |
副作用 | 出ても弱い | 出ても弱い |
対象となる疾患 | 2型糖尿病 | 2型糖尿病 |
血中半減期 | 2.9時間 | 20㎎:24.2時間 40㎎:20.8時間 |
作用時間 | 6~14時間 | 24時間 |
飲み方 | 1日2~3回朝夕に服用(1回1錠) | 1日1回(1回1錠) |
成分名 | メトホルミン | テネリグリプチン |
分類 | ビグアナイド系経口血糖降下剤 | DPP-4阻害剤 |
代表的な商品名 | メトグルコ | テネリア |
これは、メトホルミンとテネリアの血中半減期に違いがあるためです。
メトホルミンとテネリアの効き方と作用時間を比較すると、メトホルミンの方が効き目が強く、テネリアの方が長時間に渡って緩やかに作用します。
このように、メトホルミンとテネリアには、効き方と作用時間に違いがあります。
メトホルミンとは
メトホルミンは、ビグアナイド系に分類される糖尿病治療薬で、2型糖尿病の治療に広く使用されています。
メトホルミンには血糖値を下げる効果があり、作用機序は以下の通りです。
・肝臓での糖新生の抑制
・末梢での糖利用の促進
・腸管での糖吸収の抑制
メトホルミンはこれらの作用によって、インスリンに対する感受性を高めてインスリン抵抗性を改善します。
また、メトホルミンの効果は体重減少につながるため、ダイエットにも活用されています。
なお、メトホルミンは単体で飲む場合は、低血糖を引き起こしにくいです。
そして、費用も安いため海外では2型糖尿病治療の第1選択薬として推奨されています。
そのため、メトホルミンは糖尿病治療薬で2型糖尿病の治療に広く使用されているのです。
テネリアとは
テネリアはDPP-4阻害薬に分類される糖尿病治療薬で、2型糖尿病の治療によく使用されます。
有効成分はテネリグリプチンです。
テネリアは、DPP-4を阻害することでインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる効果を発揮します。
なお、食欲を増進しないため体重が増えにくいとされています。
テネリグリプチンは、肝臓と腎臓の2方向から排出される成分のため、腎臓への負担が少ないことが特徴です。
これによって、他の糖尿病治療薬が使えないことが多い腎機能が低下している人や、高齢者にも使いやすいのです。
そのため、テネリアは2型糖尿病の治療によく使用されています。
メトホルミンとテネリアの併用
メトホルミンとテネリアは併用可能で、併用によってさらなる血糖コントロールの改善が見込めます。
テネリアは単体で使用する場合は効果が緩やかなため、むしろメトホルミンと併用することが望ましいと推奨する意見もあります。
併用によって血糖コントロールの改善が見込める理由は、メトホルミンとテネリアの作用が合わさって血糖値を下げる効果を発揮するからです。
ただ、血糖値を下げる効果が強くなることで、低血糖を引き起こすリスクが高くなるため注意が必要です。
メトホルミンはインスリン抵抗性を改善することで血糖値を下げ、テネリアはインスリンの分泌を促して血糖値を下げます。
このように、血糖値を下げる仕組みに違いがあるため、それぞれの作用が合わさって効果が強くなるのです。
そのため、メトホルミンとテネリアは併用によって良好な血糖コントロールを期待できます。
メトホルミンとテネリア併用の飲み方
メトホルミンとテネリアを併用する場合の飲み方は、朝食の前または後にテネリアとメトホルミンを一緒に飲むことがおすすめです。
なお、この場合、朝食以降はメトホルミンだけ飲みます。
この飲み方をおすすめする理由は、メトホルミンとテネリアをそれぞれ単体で飲む場合の飲み方が関係しています。
それぞれを単体で飲む場合の飲み方は、以下の通りです。
〈メトホルミン〉
・1回1錠を1日2~3回
・食前または食後に飲む
・飲む量は効果や副作用によって調整できるが、1日に飲める量は最大2250mgまで
・次に飲むまでに最低3時間は空ける(6時間以上推奨)
〈テネリア〉
・1日1回1錠(20mgまたは40mg)を飲む
・20mgで効果が不十分だった場合は、1日に最大40mgまで
増量可能
いずれの場合も、コップ一杯程度の水またはぬるま湯で飲んでください。
メトホルミンとテネリアを併用する場合、2つは同じタイミングで飲んで問題ありません。
飲み忘れを防ぐためには、朝食の前に2つ同時に飲んでおくといいでしょう。
こういった理由から、メトホルミンとテネリアを併用する場合は、朝食の前か後に2つ同時に飲むことがおすすめです。
メトホルミンとテネリアの注意点
メトホルミンとテネリアを飲むときは、以下の医薬品や飲み物との併用に注意する必要があります。
〈メトホルミン〉
・過度のアルコール
・ヨード造影剤
〈テネリア〉
・スルホニルウレア薬、インスリン製剤
・不整脈薬
いずれも、併用によって重大な副作用を引き起こす可能性があるためです。
メトホルミンと過度のアルコールやヨード造影剤を併用すると、乳酸アシドーシスを引き起こすリスクが高まります。
特に過度のアルコール摂取は、メトホルミンの禁忌とされています。
また、CTやX線検査などでヨード造影剤を使用する前後48時間はメトホルミンを休薬してください。
そして、テネリアとスルホニルウレア薬やインスリン製剤との併用は、低血糖を引き起こすリスクが高くなります。
テネリアは単体で飲む場合は低血糖が起こりにくい医薬品ですが、併用により血糖値を下げる効果が強くなると低血糖を引き起こす可能性があるのです。
また、テネリアと不整脈薬との併用は、不整脈を引き起こす可能性があります。
そのため、メトホルミンやテネリアを飲むときは併用する医薬品や飲み物に注意しましょう。
テネリアは高齢者でも服用できる?
テネリアは、高齢者でも服用できます。
テネリアは、高齢者の糖尿病に対する有効性が報告されているからです。
ただし、75歳以上の高齢者への使用は、慎重に検討する必要があります。
なお、高齢者の場合は服用の回数を減らしたり、服用のタイミングを統一するなどの対策をとり、体への負担を減らすことが推奨されています。
また、テネリアは、単体で使用する場合は低血糖を引き起こしにくいことも高齢者に使いやすい理由です。
そのため、テネリアは高齢者でも服用できる糖尿病治療薬です。
テネリアは手術前に服用できる?
テネリアは、手術の前は服用できません。
一般的に手術前は絶飲食になり、血糖値が上がる機会がないからです。
血糖値が上がる機会がなければ、テネリアを服用して血糖値を下げる必要はありません。
また、食事をしていない状態でテネリアを服用すると、低血糖を引き起こすリスクが高くなってしまうことも理由として挙げられます。
病気などで手術をすることが決まった場合は、テネリアを服用していることを医師に相談しましょう。
そのときの体の状態や、医師の判断によって違いはありますが、基本的に手術前の24時間はテネリアを一時的に休薬する必要があります。
そのため、テネリアは手術の前は服用できないのです。
メトホルミンとテネリアの副作用
メトホルミンとテネリアには、以下のような副作用があります。
そのため、体調の変化を見逃さないように注意してください。
〈メトホルミン〉
主な副作用:消化器症状(下痢、吐き気など)
重大な副作用:乳酸アシドーシス、低血糖、肝機能障害、横紋筋融解症など
〈テネリア〉
主な副作用:便秘、腹痛
重大な副作用:低血糖、腸閉塞、肝機能障害、間質性肺炎、類天疱瘡、急性膵炎など
メトホルミンとテネリアの副作用は、有効成分や作用機序に違いがあるため、症状も違います。
メトホルミンの主な副作用は、下痢や吐き気などの消化器症状です。
そして、特に注意が必要な副作用に乳酸アシドーシスがあります。
非常に稀な副作用ですが、致死率が高い疾患のため速やかな治療が必要です。
また、テネリアの主な副作用は便秘や腹痛です。
なお、メトホルミンとテネリアの共通する副作用として低血糖があります。
ただ、どちらも単体で使用する場合は低血糖を引き起こしにくいのが特徴です。
このように、メトホルミンとテネリアにはそれぞれ副作用があるため、体調の変化を見逃さないように、よく注意しておきましょう。
メトホルミンとテネリアの禁忌事項
メトホルミンとテネリアには、以下のような禁忌事項があり、禁忌に該当する人はメトホルミンやテネリアを飲めません。
【メトホルミンとテネリアの禁忌事項】
〈メトホルミン〉
①乳酸アシドーシスの既往歴がある人
②重度の腎機能障害がある人
③透析治療中の人(腹膜透析を含む)
④重度の肝機能障害がある人
⑤心血管系、肺機能に高度の障害(ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓等)がある人または、その他の低酸素血症を伴いやすい状態にある人
⑥直近6ヶ月以内に脳梗塞、脳出血、心筋梗塞の既往歴がある人
⑦脱水症の人又は脱水状態が懸念される人(下痢、嘔吐等の胃腸障害のある人、経口摂取が困難な人等)
⑧過度のアルコール摂取者
⑨重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の人
⑩重症感染症、手術前後、重篤な外傷がある人
⑪栄養不良状態、飢餓状態、衰弱状態、脳下垂体機能不全又は副腎機能不全の人
⑫妊婦又は妊娠している可能性がある人
⑬メトホルミンの成分又はビグアナイド系薬剤に対し過敏症の既往歴がある人
〈テネリア〉
・テネリアの成分に対し過敏症の既往歴がある人
・重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡
・1型糖尿病の人
・重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある人
これらは、いずれも重大な副作用を引き起こすリスクが高まったり、メトホルミンやテネリアでの治療が適切ではない状態だからです。
また、禁忌ではありませんが、メトホルミンやテネリアを飲むときに注意が必要な場合もあります。
・合併症や既往歴などがある人
(メトホルミン:不規則な食事、激しい筋肉運動など低血糖を起こすおそれがある人)
(テネリア:過度のアルコール摂取者、栄養不足状態などの低血糖を起こすそれがある人、心不全がある人、腹部手術または腸閉塞の既往歴がある人、不整脈の疑いがある人)
・軽度~中度の肝機能障害がある人
・授乳中の人
・幼児
・高齢者
・妊婦(テネリアのみ)
・軽度~中度の腎機能障害がある人(メトホルミンのみ)
また、これらに該当していなくても、そのときの健康状態などによってはメトホルミンやテネリアを飲めない場合もあります。
このように、メトホルミンとテネリアには禁忌事項があり、該当する人は飲むことができないので注意してください。
まとめ
メトホルミンとテネリアについてのポイントをまとめました。
- メトホルミンとテネリアの違いは効き目と作用時間
- 効き目はメトホルミンの方が強く、作用時間はテネリアの方が長い
- メトホルミンとテネリアは併用可能
- メトホルミンとテネリアを併用する場合は、朝食の前か後に2つ同時に飲むことがおすすめ
- メトホルミンとテネリアは、併用する医薬品の種類などに注意が必要
- メトホルミンもテネリアも手術前は一時的に休薬する必要がある
メトホルミンとテネリアは、どちらも比較的副作用が起こりにくく、腎臓への負担も少ないとされる糖尿病治療薬です。
Q&A
メトホルミンとテネリアに関してよくある質問をまとめましたのでご紹介します。
Q.テネリアの一般名は?
A. テネリアの一般名は、テネリグリプチンです。
テネリグリプチンはDPP-4阻害剤に分類される糖尿病治療薬です。
低血糖を引き起こすリスクが低いことと、体重を増やしにくい特徴があるため、2型糖尿病の治療によく使用されています。
Q.テネリアの配合剤は何かありますか?
A. テネリアの配合剤には、カナリアという医薬品があります。
カナリアは、テネリグリプチンを有効成分とするテネリアと、カナグリフロジンを有効成分とするカナグルの2つの成分が含有された配合剤です。
カナリアには、テネリグリプチンが20mg、カナグリフロジンが100mg配合されています。
Q.テネリアとトラゼンタの違いは?
A. テネリアとトラゼンタの違いは、成分の排泄経路です。
トラゼンタの成分は胆汁に排泄され、テネリアの成分は肝臓と腎臓に排泄されます。
なお、テネリアとトラゼンタは、どちらもDPP-4阻害剤に分類される糖尿病治療薬で、腎臓への負担が少ないのが特徴です。