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メディカルダイエットは保険適用になる?
メディカルダイエットは基本的に保険適用外であり、自由診療になります。
これは多くのメディカルダイエットは体重や脂肪を減少させて体型を改善し、見た目を美しくするという美容目的でおこなわれるためです。
ただし、治療が必要な肥満は病気であると考えられているため、肥満治療を目的としたダイエットでは保険適用になる場合があります。
この記事では、体型に悩みがある人に向けてダイエットで保険適用になる条件や治療法について解説していきます。
メディカルダイエットで保険適用になる条件と治療法
ダイエットで保険適用になる条件は治療法によって異なります。
保険適用になる治療法と条件は下記の通りです。
〈サノレックス〉
・高度肥満症の人
・肥満度が+70%以上で食事療法や運動療法の効果が不十分な人
〈ウゴービ〉
・BMI35以上の人
・BMI27以上で肥満に関連する健康障害(合併症)が2つ以上ある人
〈一部の漢方薬〉
肥満治療では下記の漢方薬が保険適用されます。
・防風通聖散
・大柴胡湯
・防已黄耆湯
〈腹腔鏡下スリーブ状胃切除術〉
・BMI35以上の高度肥満症で糖尿病、高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のいずれか1つ以上を合併している人
・BMI32~34の肥満症で①~④のいずれか2つ以上を合併しており、6ヶ月以上の内科的治療で効果が不十分だった人
① 糖尿病(HbAlc≧8.0%)
② 高血圧症(降圧薬での管理が困難な収縮期血圧≧160mmHg)
③ 脂質異常症(スタチン製剤などでの管理が困難なLDL-C≧140mg/dlまたはnonHDL-C≧170mg/dl)
④ 重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(AHI≧30)
これらがそれぞれどのような医薬品や手術なのか次項で解説します。
そして、上記以外でリベルサスなどダイエット効果が期待されている医薬品もありますが、現時点では保険適用外です。
サノレックス(マジンドール)
サノレックスは食欲抑制薬に分類される経口薬です。有効成分はマジンドールです。
サノレックスには脳に作用して食欲を抑制する効果があります。少ない食事量でも満腹感を得られるようになり、摂取カロリーが減るため体重減少につながります。
ただ、食事療法や運動療法の補助として使用される医薬品のため、食事や運動習慣の改善も必要です。
そして、副作用は下記の通りです。
〈主な副作用〉
・口の渇き
・便秘
・吐き気や嘔吐
・胃の不快感
・睡眠障害
〈重大な副作用〉
・依存性
・肺高血圧症
サノレックスは飲める期間は最大で3ヶ月と決められています。さらに、飲み始めてから1ヶ月以内に効果が見られない場合は使用を中止します。
ウゴービ
ウゴービはGLP-1受動態作動薬に分類される注射薬です。インスリンの分泌を促進して血糖値を下げる効果があります。
また、副作用は下記の通りです。
〈主な副作用〉
・食欲減退
・頭痛
・吐き気
・下痢
〈重大な副作用〉
・低血糖
・急性膵炎
・胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸
ウゴービは週に1回、毎回同じ曜日に自己注射する必要があります。
なお、ウゴービと同じGLP-1受容体作動薬には注射薬ではなく、経口薬のリベルサスもあります。
漢方薬
肥満治療で保険適用になる漢方薬は防風通聖散、大柴胡湯、防已黄耆湯の3つです。
それぞれの効果とどのような人に向いているか解説していきます。
まず、防風通聖散は脂肪細胞を活性化して脂肪を燃焼する効果や便秘を改善する効果が期待できます。胃腸が丈夫で脂肪が多い人、便秘気味な人におすすめです。
次に、大柴胡湯は脂質の代謝を改善する効果や便秘を改善する効果が期待できます。比較的体力があって筋肉質な人、便秘気味の人におすすめです。
そして、防已黄耆湯には体内の余分な水分の排出を促しむくみを改善する効果が期待できます。体力がなく疲れやすい人、むくみやすい人におすすめです。
ただし、漢方薬は体重減少効果に個人差があります。効果を得やすくするために体質に合わせて使い分けることが重要です。
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は腹腔鏡を使用して胃の外側を切除する手術です。
現在、国内での肥満治療において保険適用で受けられる唯一の手術で世界的にも多くおこなわれています。
この手術では胃を切除して小さくすることで食事量を減らせます。また、胃から分泌される食欲増進ホルモンが減るため食欲が低下し体重減少につながるのです。
なお、消化管とのバイパス術をおこなわないため、栄養吸収への影響が少ないとされています。
ただし、1度切除した胃は元に戻せません。
メディカルダイエットとは
メディカルダイエットとは、医療機関で医薬品や医療機器を使用しておこなわれるダイエットのことです。生活習慣の改善(食事療法、運動療法)や薬物療法、手術などの方法があります。
メディカルダイエットは体重や脂肪を減少させて体型を改善し、見た目を美しくするという美容目的で行われることが多いため基本的には保険適用外で自由診療になります。
なお、メディカルダイエットの具体的な種類などについてはこちらの記事で紹介しているのであわせてお読みください。
肥満治療とは
肥満治療とは肥満や肥満症に対し、減量によって内臓脂肪を減らして肥満に合併する疾患を予防・改善させる治療です。
肥満症は、BMI25以上の肥満で肥満に関連する11種の健康障害(合併症)のいずれか1つ以上があるか、健康障害を起こしやすい内臓脂肪の蓄積がある状態のことです。さらに、BMI35が以上の場合は高度肥満症に分類されます。
なお、肥満に関連する11種の健康障害は下記の通りです。
① 耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常など)
② 脂質異常症
③ 高血圧
④ 高尿酸血症、痛風
⑤ 冠動脈疾患
⑥ 脳梗塞、一過性脳虚血発作
⑦ 非アルコール性脂肪性肝疾患
⑧ 月経異常、女性不妊
⑨ 閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肥満低換気症候群
⑩ 運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)
⑪ 肥満関連腎臓病
ただし、肥満と肥満症は違います。
肥満症は上述の通りですが、肥満は身長と比較して体重が重い状態のことです。BMIが25以上の場合は肥満に該当します。さらにBMIが35以上になると高度肥満に分類されます。
肥満や肥満症は適切な治療を受けることが必要です。当てはまるかもしれないと思う人は医療機関を受診しましょう。
肥満外来について
肥満外来とは専門家の指導のもと、食事療法や栄養指導、運動療法などを利用して体重減少を目指す診療科です。
肥満外来での治療内容は食事療法、運動療法、薬物療法などが挙げられます。
このような治療を進めていく過程で根本的な生活習慣や体質が改善されるため、体重減少だけでなくリバウンドしにくい健康的な体を目指せるのです。
なお、肥満外来で行われるダイエットをメディカルダイエットと呼ぶこともあります。
ダイエットでの自由診療と保険診療の違い
メディカルダイエットでの自由診療と保険診療の違いとして挙げられるのは、価格と治療法です。
美容目的でのダイエットの場合は、基本的に保険適用外のため自由診療です。そして、肥満治療目的のダイエットで保険適用条件を満たす場合は保険診療が受けられます。
また、自由診療は全額自己負担となりますが治療法の選択肢が広いというメリットがあります。
一方、保険診療では自己負担額は基本的に3割となり金銭的な負担が少ないです。しかし、保険が適用される治療法は限られており、利用できる人も限定的です。
保険診療と自由診療どちらもメディカルダイエットと呼ばれる場合がありますが、肥満を改善して健康になることと、痩せてきれいになることで目的が大きく異なります。
まとめ
ここまでにお伝えしたことのポイントをまとめました。
- メディカルダイエットは美容目的でおこなわれることが多く基本的に保険適用外の自由診療になる
- 肥満治療目的で特定の条件を満たしている人は保険適用でダイエットができる場合がある
- 自分が保険適用の条件に当てはまるか知りたい場合は医療機関を受診する
Q&A
メディカルダイエットと保険適用についてのよくある質問にお答えします。
Q.ダイエット手術で保険適用になるのは?
A. ダイエットで保険適用となる外科手術は腹腔鏡下スリーブ状胃切除術です。
胃の外側を切除して胃を小さくする手術で、これによって食事量が減らせます。また、食欲を増進するホルモンの分泌も減るため食欲が低下し体重減少につながります。
シンプルで有効な術式ですが、1度切除した胃は元に戻せません。
Q.肥満外来は保険適用?
A. 保険適用になる場合もあります。
BMI35以上の高度肥満の人やBMI25以上で肥満に関連する合併症がある人などは、基本的に保険適用になります。
しかし、医療機関や治療法によって異なる場合があるため、保険診療が受けられるか確かめたい場合は受診する医療機関に確認しましょう。
Q.メトホルミンダイエットは保険適用になる?
A. ダイエット目的でメトホルミンを飲む場合、保険は適用されません。
メトホルミンは2型糖尿病の治療や不妊治療では保険が適用されますが、ダイエット目的での使用は適応症と異なるため保険適用外で自由診療になります。
なお、ダイエットでのメトホルミンの使用についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。あわせてお読みください。