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メトホルミンによる副作用の症状と対処法

メトホルミンによる副作用の症状と対処法

メトホルミンは、2型糖尿病治療薬としてだけではなくダイエット薬としても注目を集めている医薬品です。
しかし、メトホルミンも医薬品である以上、効果があるぶん副作用のリスクがあります。

そこでこの記事では、「メトホルミンを飲みたいけど副作用が心配…」という人に向けて、メトホルミンの副作用について徹底解説していきます。

副作用の種類副作用が起こる頻度、副作用が起こったときの対処法など、幅広くわかりやすくまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。

メトホルミンの副作用

上述の通り、メトホルミンには副作用があります。
また、重大な副作用は少ないものの、副作用の種類自体は多いとされています。

メトホルミンの副作用は以下の通りです。

発現率 5%以上 1〜5%未満 1%未満 頻度不明
消化器症状 下痢、悪心、食欲不振、腹痛、嘔吐 消化不良、腹部膨満感、便秘、胃炎 胃腸障害、放屁増加
血液症状 低血糖 貧血、白血球増加、好酸球増加、白血球減少 乳酸アシドーシス、血小板減少
過敏症 発疹、そう痒
肝臓症状 肝機能異常 肝機能障害、黄疸
腎臓症状 BUN上昇、クレアチニン上昇
代謝異常 乳酸上昇 CK上昇、血中カリウム上昇 血中尿酸増加 ケトーシス
その他の症状 めまい・ふらつき 全身倦怠感、空腹感、眠気、動悸、脱力感、発汗、味覚異常、頭重、頭痛、浮腫、ビタミンB12減少 横紋筋融解症、筋肉痛

※太字は注意が必要な副作用

主な副作用は下痢や吐き気などの消化器症状、
重大な副作用
乳酸アシドーシス、低血糖、肝機能障害、横紋筋融解症です。

あまり普段耳にしない名前もありますよね。
しかし、中には命に関わる重大な症状もありますので、メトホルミンを飲むにあたって副作用についての正しい知識を付けておくことはとても大切です。

では、それぞれの副作用の症状、特徴、原因などについて次の項目から1つずつ解説していきます。

消化器症状

消化器症状

メトホルミンの副作用の中で最もよく現れる消化器症状から解説していきます。

主な症状は下痢、腹痛、吐き気、食欲不振などで、まれに便秘が起こることもあります。

消化器症状は、ただの副作用であれば軽度で一過性であることがほとんどですが、まれに乳酸アシドーシスの初期症状である場合があります。

自分の症状がただの副作用なのか、それとも乳酸アシドーシスの初期症状なのかの判別は難しいため、「症状が酷くつらい」「なかなか改善しない」という場合はすぐに医療機関を受診してください。

では次に、消化器症状でも起こる頻度が高い下痢吐き気の症状についてそれぞれ詳しく解説していきます。

下痢

下痢は、メトホルミンによる消化器症状の中で最も起こる頻度が高い症状です。

下痢が起こる正確な原因は不明ですが、腸内フローラの変化ブドウ糖の代謝の変化、胆汁塩酸塩の消化不良などが原因として挙げられています。

ただ、症状としては軽度で一過性であることが多く、基本的には2週間程度で体がメトホルミンに慣れるため改善に向かいます。
症状が軽いようであれば1、2週間程度は飲み続けて様子を見てみましょう。

メトホルミンの副作用による下痢については、別の記事でもより詳しく解説しています。
下痢が起こってしまった時の対処法、下痢の症状がいつまで続くのかなど幅広くまとめていますので、ぜひあわせてご覧ください。

吐き気

吐き気は、下痢に次いで起こる頻度が高い症状です。

こちらも一過性で軽度なことが多いため、症状が重くなければ飲み続けながら様子を見ることが一般的な対処法です。

ただし、糖尿病が原因で吐き気が起こっている可能性もあります。
糖尿病が原因である場合、放置しておくと命に関わる可能性もあります。
吐き気の症状が重く日常生活に支障が出るほどつらいときは、無理せずすぐに医療機関を受診してください。

なお、吐き気についても、別の記事で起こったときの対処法やより詳しい原因などを解説しています。
こちらも幅広くまとめていますので、お悩みの人はぜひご覧ください。

乳酸アシドーシス

乳酸アシドーシス

続いて、メトホルミンの重大な副作用である乳酸アシドーシスについて解説していきます。

乳酸アシドーシスとは、血液中の乳酸が増加して血液が酸性に傾く状態のことです。
主な症状は消化器症状、倦怠感、筋肉痛、過呼吸などです。

乳酸アシドーシスが起こる原因は、体内での乳酸の過剰生産や代謝の低下またはその両方とされています。
メトホルミンの場合、メトホルミンが持つ糖新生を抑制する働きによって乳酸が分解されなくなり、血液中に乳酸が蓄積されるため乳酸アシドーシスにつながってしまうのです。
メトホルミンによる乳酸アシドーシスの発症は非常にまれといわれています。
しかし、1度発症してしまうと治療後も経過が悪いことが多いため、命を落とす危険性があります。

乳酸アシドーシスを起こしたときはメトホルミンを飲むことを中止し、すぐに医療機関で適切な処置を受けてください。

乳酸アシドーシスについては、別の記事でより詳しく解説しています。
乳酸アシドーシスを発症しやすい人、発症した場合の対処法など幅広くわかりやすくまとめていますので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。

肝機能障害・黄疸

肝機能障害・黄疸

メトホルミンによって、AST、ALT、Al-P、γ-GTP、ビリルビンの著しい上昇を伴う肝機能障害が起こる場合があります。
それにより、肝機能が低下し肝臓における乳酸の代謝が抑制されてしまうため、肝機能障害は乳酸アシドーシスを引き起こす原因にもなってしまうのです。

※AST、ALT…肝臓に含まれる酵素
ALP…胆汁に多く含まれる酵素
γ-GTP…胆道から分泌される酵素のひとつ
ビリルビン…赤血球に含まれる黄色い色素

肝機能障害では初期は無症状なことが多いですが、倦怠感や発熱、発疹、そして黄疸が現れる場合もあります。

黄疸とは、肝機能が低下することでビリルビンを排泄できなくなり、白目や皮膚が黄色くなる症状のことです。

肝臓には痛みを感じる神経がないため、何らかの症状が出たときには肝機能障害がかなり進行していることが多いです。
メトホルミンを飲んでいるときは、定期的に肝機能の検査を受けましょう。

低血糖

低血糖

次に、低血糖について解説します。

低血糖とは、血液中のブドウ糖が少なくなりすぎてしまい、血糖値が70mg/dl以下になる状態のことです。
初期症状は脱力感、強い空腹感、発汗、手足の震えなどで、進行すると意識障害昏睡を引き起こします。

メトホルミンによって起こる低血糖の原因は、
・不規則な食事や食事量の不足
・過度のアルコール摂取
・激しい運動
・他の糖尿病治療薬との併用
などが挙げられます。

冷や汗が多い、動悸がする、体がだるいなどと感じた場合、低血糖の初期症状である可能性が高いです。
このような症状が起こったらすぐに糖分を補給して安静にしましょう。

なお、高所作業や自動車などの運転中に低血糖が起こると事故につながる可能性があるため、当てはまる人は十分注意してください。

横紋筋融解症

横紋筋融解症

最後に、横紋筋融解症について解説します。

横紋筋融解症とは、骨格筋細胞の壊死や融解によって細胞内成分のミオグロビンが血液中に流出する疾患です。

主な症状は筋肉痛、脱力感、赤褐色尿などです。

重症化すると、急性腎不全や呼吸困難、多臓器不全などを併発して命に関わる危険があります。
また、回復しても重篤な障害が残る可能性もあります。

横紋筋融解症の発症は、赤褐色尿がいちばん分かりやすい症状です。
「血尿のような尿が出ている」、「手足、肩、腰などの筋肉がゆるむ」、「手足に力が入らない」といった症状が出たら、すぐに医療機関を受診してください。

メトホルミンで抜け毛/脱毛はする?

メトホルミンで抜け毛/脱毛はする?

メトホルミンの副作用に関連して、抜け毛脱毛というワードを目にしたことがある人も多いでしょう。
しかし、メトホルミンが直接脱毛を引き起こすという科学的根拠はほとんどありません。

ただし、糖尿病治療中の場合、ホルモンや高血糖の影響が抜け毛の原因となる可能性は考えられます。

糖尿病の人は、糖質の多量摂取によりホルモンバランスが乱れている、長期間の高血糖により血流が滞っているなどの理由から育毛環境が悪くなっています。
そのため、抜け毛や脱毛が起こるリスクが高いのです。

糖尿病治療中の人で抜け毛や脱毛が気になる場合は、医師に相談し適切な治療法を検討しましょう。

その他に起こりうる副作用

その他に起こりうる副作用

これまでに紹介した消化器症状、乳酸アシドーシス、肝機能障害、低血糖、横紋筋融解症の他にも下記の副作用が起こる可能性があります。

・メトホルミンやビグアナイド薬への過敏症
・発疹
・頭痛
・眠気
・貧血
・めまい・ふらつき
・味覚異常
・浮腫
・動悸
・発汗
・脱力感
・ビタミンB12減少

ビタミンB12の減少については、メトホルミンがビタミンB12の吸収を妨げることで起こります。
このビタミンB12の減少が原因となり、貧血味覚障害(Hunter舌炎)が起こることがあります。
特に、メトホルミンを長期間使用している場合に起こる可能性が高くなりますので、当てはまる人はビタミンB12を含む魚介類、藻類、肉類などを積極的に摂るようにしましょう。

メトホルミンによる副作用の発現頻度

メトホルミンによる副作用の発現頻度

ここまでメトホルミンによる副作用の症状について解説してきましたが、実際に副作用が起こる頻度も気になるところです。

メトホルミンの副作用の発現頻度は、最も多い消化器症状だと下痢(40.5%)、悪心(15.4%)、食欲不振(11.8%)、腹痛(11.5%)という報告が挙がっています。

重大な副作用である乳酸アシドーシス、肝機能障害・黄疸、低血糖、横紋筋融解症については、正確な発現頻度は不明ですが起こる頻度としては非常にまれです。
ただし、乳酸アシドーシス・低血糖を起こしやすい状態でメトホルミンを飲んだ場合や、メトホルミンを飲む量が多い場合は、これらの重大な副作用が起こるリスクが高くなります。

安全にメトホルミンを飲み続けるためにも、自分の体調や副作用の出やすさなどに合わせて時には休薬することも必要です。

メトホルミンで副作用が起こったときの対処法

メトホルミンで副作用が起こったときの対処法

では、実際にメトホルミンを飲んで副作用が起こったときはどのように対処すればいいのでしょうか?

下痢などの消化器症状が起こった場合は、症状が軽ければ休薬せずに少し様子を見ましょう。
メトホルミンを飲み続けることで体が慣れ、徐々に症状が治まっていくことが多いです。

低血糖が起こった場合は、すぐに糖分を補給して安静にしましょう。
ブドウ糖(ラムネなど)が1番早く吸収されるためおすすめですが、コーラなどの砂糖が含まれているジュースを飲むことでも血糖値は上がります。
ただし、メトホルミンと併用してα-グルコシダーゼ阻害剤を飲んでいる場合はブドウ糖を補給してください。

なお、重大な副作用が疑われる場合や、下痢や吐き気などの消化器症状、低血糖が続く場合は、すぐに医療機関で適切な処置を受けてください。

メトホルミンの副作用を予防するコツ

メトホルミンによる副作用のリスクを下げるために、以下のことに注意しましょう。


副作用を予防するコツ
  • アルコール摂取を避ける
    → アルコールを摂取すると、低血糖や乳酸アシドーシスを引き起こしやすくなります。
    また、過度なアルコール摂取はメトホルミンの禁忌とされています。
  • 適度な水分補給をする
    → 脱水状態になると、乳酸アシドーシスを引き起こしやすくなります。
  • 胃の中が空の状態でメトホルミンを飲まない
    → 空腹状態でメトホルミンを飲むと、低血糖を引き起こしやすくなります。
    また、食事が摂れないほど体調が悪いときにメトホルミンを飲むと、乳酸アシドーシスのリスクが高くなります。
    ちなみに、食後にメトホルミンを飲むと、メトホルミンの吸収スピードが遅くなり消化器症状が起こりにくくなるためおすすめです。
  • メトホルミンを飲む量を増やすときは少しずつ増やす
    → メトホルミンを飲む量を一気に増やすと、消化器症状や乳酸アシドーシスなどの副作用を引き起こしやすくなります。
  • 正しい飲み方を守る
    → 1日の最大摂取量以上のメトホルミンを飲んだり、1度に2回分まとめて飲んだりすると、消化器症状や乳酸アシドーシスなどの副作用を引き起こしやすくなります。

メトホルミンを飲んでいる間は、体調の変化にも十分注意してください。

メトホルミンの副作用ではないもの

メトホルミンの副作用ではないもの

生理不順、頻尿、発熱、カンジダについては、メトホルミンの副作用には含まれません。

これらはメトホルミンの副作用に関連してよく挙がる症状ですが、実は副作用ではなく別の理由で起こっていると考えられます。

その理由について、次項から1つずつ解説していきます。

生理不順

実際にメトホルミンを使用した人の口コミ等では、メトホルミンを飲んでから生理不順になったという意見もみられます。
しかし、生理不順はメトホルミンの副作用に含まれません。

むしろ、メトホルミンは、多嚢胞性卵巣症候群という不妊の原因となる排卵障害の治療において治療薬として使用されており、飲むことで排卵や月経が再開することもあります。

メトホルミンを飲んでいる人で生理不順で悩んでいる場合、副作用以外の原因である可能性が高いため、医療機関を受診し原因を探りましょう。

頻尿

頻尿の症状は、メトホルミン単体では副作用には含まれません。

しかし、SGLT2阻害薬などの利尿作用のある医薬品と併用している場合は、尿量が増え頻尿になる可能性があります。

これらの医薬品とメトホルミンを併用する場合は、利尿作用による脱水症状のリスクが高まりますので、適度な水分補給を心がけてください。

発熱

発熱の症状もメトホルミンの副作用には含まれません。

しかし、メトホルミンの副作用による消化器症状をきっかけに発症した乳酸アシドーシスにおいて発熱が起こったという事例は挙がっています。

この事例から、メトホルミンと発熱に直接関係があるわけではないものの、乳酸アシドーシスの発症過程で発熱が起こる可能性はあると言えます。

カンジダ

メトホルミンの副作用としてカンジダになる危険性はありません。
カンジダを含む、自己感染(常在菌が免疫力の低下などの理由から増加し発症すること)による真菌症についても、メトホルミンが原因で起こるということはありません。

ただし、メトホルミンと同じ糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬においては、副作用にカンジダなどの尿路・性器感染症が含まれます。

そのため、メトホルミンとSGLT2阻害薬を併用している場合は、ウォシュレットを使用する、こまめに適度な水分補給を心がけるなどの尿路・性器感染症対策が必要です。

まとめ

メトホルミンの副作用について、この記事で解説したことをまとめました。

  • メトホルミンには副作用があり、重大な副作用は少ないが副作用の種類自体は多い
  • 主な副作用は下痢や吐き気などの消化器症状で、重大な副作用は乳酸アシドーシス
  • メトホルミンを飲んでいる間は体調の変化に注意して、不安な症状などがある場合は医師や薬剤師に相談する

メトホルミンを飲むときは、効果だけでなく副作用についても正しい知識をつけておきましょう。

Q&A

Q&A

メトホルミンの副作用についてのよくある質問にお答えしていきます。

Q.メトホルミンは寝る前に飲んでもいい?

A. 夕食時のメトホルミンの飲み忘れに気が付いたという場合は、寝る前に飲んでも問題ありません。
ただし、夕食を摂った時間からかなり時間が空いている、すでに空腹になってしまったという場合は飲むことを避け、1回分スキップしましょう。

Q.メトホルミンを飲むと胃もたれする?

A. メトホルミンの副作用として、頻度は高くないものの(発現率0.09%)胃もたれが起こることがあります。
実際にメトホルミンを飲んだ人の口コミにも、胃もたれについて言及している意見が挙がっています。

Q.メトホルミンの致死量は?

A. 人に近いサルにおける実験では、一度に693.75㎎/㎏のメトホルミンの投与が致死量とされました。
これは、サルの体1㎏に対し約694㎎のメトホルミンが致死量となるという意味になります。