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糖尿病とアルコール|適量の飲酒は予防効果あり
糖尿病でもアルコールを飲むことができます。
むしろ、適量のアルコール摂取は糖尿病予防につながるといわれており、体に良いのではないかという説も挙がっています。
ただし糖尿病の場合、飲みすぎには十分注意が必要です。
そこでこの記事では、糖尿病とアルコールの関係について詳しく解説していきます。
糖尿病の人が飲んでもいいアルコール量やアルコールの種類、実際に飲む時のポイントなどを紹介していますので、ぜひ最後までご覧いただき、賢くアルコールを楽しんでください。
糖尿病でもアルコールを飲んでいい
糖尿病でもアルコールを飲んでいいのですが、以下の条件を守れる人に限られます。
①血糖コントロールが良好で安定している
②体重が管理できている
③合併症、飲酒制限が必要な病気がない
④高血圧、動脈硬化があっても軽い
⑤アルコール量の限度を守る自制心がある
また、厚生労働省の指標によると、1日の適度なアルコール量は20~25gとされています。
糖尿病の人はこの目安を必ず守りましょう。
アルコールの種類ごとの具体的な目安は以下を参考にしてください。
【アルコールの種類】 | 【量の目安】 |
---|---|
ビール(5%) | 1本(500ml) |
日本酒 | 1合(約180ml) |
焼酎(12度) | 1杯(約100ml) |
ウィスキー | ダブル1杯(約60ml) |
ワイン | 2杯(約200ml) |
缶酎ハイ | 1本(約350ml) |
アルコールが何g含まれているかを計算するときは、以下の式にお酒の量と度数を入れてください。
「アルコール量(g) = お酒の量(ml) × [アルコール度数(%) ÷ 100] × 0.8」
例:アルコール度数5%のビール1本(500ml) → 500(ml)[5(%) ÷ 100] × 0.8 = 20
なお、女性や高齢者の場合は、アルコールの分解に時間がかかるため20g以下を目安としてください。
糖尿病の人でもアルコールを楽しめますが、条件や摂取量の目安があるため、安全にアルコールを楽しめるようしっかり条件を守りましょう。
適量のアルコールは糖尿病を予防
厚生労働省の指針では、適量のアルコール摂取は糖尿病の発生を予防する可能性があるとされています。
具体的には、1日の適度なアルコール量である20~25g程度の摂取が糖尿病の発生を抑え、さらに血糖コントロールの改善や、糖尿病の合併症リスクの減少も期待できるといわれています。
また糖尿病の場合でも、日本人を対象とした大規模調査「NIPPON DATA」の調査でアルコール摂取の有効性が報告されました。
適量のアルコールを摂取する習慣がある人は、全くない人に比べ、心血管疾患などの死亡リスクがむしろ低いという結果が出たのです。
適量のアルコールは、健康な人だけではなく糖尿病の人にとってもメリットとなる場合があります。
では、糖尿病の場合どのようにアルコールを摂取していくと効果的なのでしょうか?
次項で解説していきます。
週2日のアルコール「休肝日」
糖尿病の人がアルコールを摂取する場合、週に2回の「休肝日」を設けましょう。
休肝日を設けることで、アルコール依存症やアルコールによる死亡リスクを防ぐことができます。
習慣的なアルコール摂取は血糖コントロールを乱し症状の悪化につながるため、毎日飲むことは避けましょう。
また、休肝日を設けたからといってアルコールを1日に大量に摂取していいわけではありません。
1日のアルコール摂取量の目安は必ず守りましょう。
糖尿病の人は飲みすぎに十分注意し、週に2回の休肝日を設けてアルコールを楽しみましょう。
糖尿病の人におすすめなアルコールの種類
糖尿病の人におすすめなアルコールの種類は、ウィスキーやジン、ウォッカなどの蒸留酒です。
また、なるべくアルコール度数が低く糖質が少ないものを選んでください。
糖質が多いものやアルコール度数が高いものは、血糖値の急激な上昇や変動を引き起こし、糖尿病の症状を悪化させるリスクが高まります。
焼酎やウィスキーなどをストレートで飲むことも、体に負担がかかるので避けましょう。
なお、アルコールの適量には個人差があります。
糖尿病の人は脂肪肝により肝臓が弱っていることも多いため、もともとアルコールに弱い人は種類に限らず少量で抑えるか、アルコール自体を控えてください。
糖尿病の人には、度数が低く糖質も少ない種類のアルコールがおすすめです。
また適量には個人差があるので、種類に限らず自分にとっての適量でとどめましょう。
糖尿病とノンアルコールビール
ノンアルコールビールは、糖尿病の人にとって有効な選択肢となります。
ノンアルコールビールはアルコールをほとんど含んでいないため、血糖値の変動が起こりにくいのです。
具体的には、いつものお酒をノンアルコールビールに置き換えることでアルコール摂取量を減らすことができ、飲みすぎ防止にもなるためおすすめです。
ただし、酒税法ではノンアルコールの定義をアルコール分1%未満のものとしています。
商品によっては微量に入っている可能性があるため、飲みすぎには注意してください。
ノンアルコールビールをうまく活用して、飲みすぎに注意しつつお酒を楽しみましょう。
「糖質ゼロ」表記に注意
「糖質ゼロ」と表記されていても、基準値未満の糖質や人工甘味料を含んでいることがあるので、飲みすぎないようにしてください。
健康増進法に基づく栄養表示基準によると、”飲料では100mL当たり糖質0.5g未満であれば「糖質ゼロ」と表示できる”とされています。
また、糖質ゼロの商品にはよく人工甘味料が使用されています。
人工甘味料は体の中に入っても血糖にならないため、血糖値に影響はありません。
しかし、人工甘味料はインスリンの効きを悪くし、肥満の原因になってしまいます。
「糖質ゼロ」と表記されていても、飲みすぎには注意しましょう。
糖尿病の人はアルコールによる低血糖に注意
糖尿病の人はアルコールによる低血糖に注意しましょう。
アルコールを摂取した日の夜中から翌日は、とくに血糖値が低くなりやすい傾向があるためです。
また、糖尿病治療にインスリンや血糖降下薬、メトホルミンを使用している人は、低血糖や乳酸アシドーシスのリスクが増加します。
そのうえアルコールの大量摂取は、「アルコール性低血糖」という状態になる可能性があるため要注意です。
食事抜きでアルコールを大量に摂取したり、長時間のアルコール摂取を続けるとリスクが高まります。
アルコールの大量摂取や空腹時の摂取は控え、飲む時は必ず食事をする、短い時間で楽しむといった工夫を。
糖尿病の人がアルコールを飲むときは、低血糖のリスクに注意しながら楽しみましょう。
糖尿病の人がアルコールを飲む時に気を付けるべきポイント
糖尿病の人がアルコールを摂取する時に気を付けるべきポイントは以下の3つです。
①アルコールを飲むときは食事と一緒に
②アルコールの飲み方
③アルコールを飲む時間帯
では、具体的にどのようにこれら3つのポイントを実践していけばよいのでしょうか?
次項から解説していきます。
①アルコールを飲む時は食事と一緒に
アルコールは食事と一緒に摂取しましょう。
アルコールは胃を通ったあと、95%が小腸で吸収されます。
食事と一緒に摂取することでアルコールが胃にとどまる時間が長くなり、小腸に送られるスピードが遅くなるため、アルコールの吸収を和らげることができるのです。
また、メトホルミンなどの血糖降下薬を飲んでいる人は、食事を摂らずにアルコールを飲むと低血糖が起こりやすくなってしまいます。
カロリーや糖質が心配でも、軽いおつまみでいいので何か胃に入れましょう。
アルコールは必ず食事と一緒に摂取して、低血糖などのリスクを抑えましょう。
おすすめのおつまみ
アルコールと一緒におつまみを食べるときは、高たんぱく・低カロリーなものを選びましょう。
おすすめのおつまみは以下の通りです。
・枝豆
・冷ややっこ
・おひたし、和え物
・刺身
・たこわさ など
アルコールを飲むとビタミンやミネラルが失われやすくなるため、野菜や海藻類を積極的に摂ってください。
また、豆類はアルコールを分解するたんぱく質が豊富に含まれているので、枝豆や冷ややっこもあわせて摂取しましょう。
ただし、食べ過ぎると肥満の原因になります。
また、糖尿病の味覚障害により塩分を感じにくくなることがあるため、塩分の摂りすぎにも注意してください。
アルコールと一緒におつまみを摂取する時は、食べ過ぎや塩分の摂りすぎに注意しつつ、高たんぱく・低カロリーなものを選びましょう。
②アルコールの飲み方
糖尿病の人がアルコールを楽しむために、飲み方には以下のような注意点があります。
・お酒と同量もしくはそれ以上の水を飲む
→アルコールの分解には水が必要です。
また、水を飲むことでアルコールを飲むスピードが緩やかになるため、飲みすぎを防ぐことができます。
・割り方に気を付ける
→糖質の少ない蒸留酒を選んだとしても、割り方で糖質が変わります。
割り材にはソーダやトニックウォーター、水を選びましょう。
・ゆっくり飲む
→ゆっくり飲むことで血中アルコール濃度の上昇がゆるやかになり、酔うスピードを抑えることができるため、飲む量を抑えつつお酒を楽しむことができます。
アルコールを楽しむ時は、飲み方や飲む量に気を付けることで糖尿病への影響を最小限に抑えましょう。
③アルコールを飲む時間帯
アルコールを飲む時間は、できれば20時までにしましょう。
20時以降は血糖値が上がりやすくなってしまう時間帯であるためです。
また、アルコールは睡眠の質を悪くします。
糖尿病の人がいい睡眠をとれなくなると、死亡リスクが大幅に上がるというデータも報告されているため、夜遅くに大量のアルコールを摂取することは避けましょう。
アルコールを飲む時は20時までに切り上げ、血糖値の上昇を抑えながら睡眠の質を確保しましょう。
糖尿病にアルコールが与える影響
アルコールは、過剰に摂取することで糖尿病の症状に以下のような悪影響を与えます。
・インスリン抵抗性の原因になる
・血糖値が乱れる
ほかにも糖尿病の場合、アルコールを少し飲みすぎただけでも心不全や心臓病のリスクが高まるといわれています。
では、具体的にアルコールは糖尿病の症状にどう影響していくのでしょうか。
次項から詳しく解説していきます。
インスリン抵抗性の原因になる
アルコールの飲みすぎは、インスリン抵抗性の原因になる可能性があります。
インスリン抵抗性とは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが十分な量作られているのにも関わらず効果を発揮できない状態のことです。
インスリン抵抗性によりインスリンが働かなくなると、血糖コントロールができなくなり高血糖になったり、血圧が上昇し高血圧になったりします。
実際に、ある調査ではアルコールを飲める人は飲めない人に比べてインスリン抵抗性が高いという報告が挙がりました。
また、アルコールの飲みすぎは食欲を抑制するホルモンを減少させ、食べ過ぎを引き起こし肥満の原因にもなります。
アルコールの飲みすぎはインスリン抵抗性の原因となり、高血糖や高血圧、食べ過ぎの原因にもつながるため、適切な飲酒量を守りましょう。
血糖値が乱れる
インスリン抵抗性以外でも、アルコールの作用やアルコールの代謝によって血糖値が乱れてしまいます。
アルコールを分解する過程で血糖値が上昇し、血糖コントロールが困難になるのです。
また、飲みすぎや食べすぎによるカロリー過多も血糖値の上昇につながります。
アルコールの飲みすぎは血糖コントロールを困難にしてしまいます。
糖尿病にとって血糖値の上昇はもっとも気を付けるべきことなので、適切なアルコール摂取量を心がけましょう。
また、血糖値を上昇させやすいラーメンと糖尿病の関係について別の記事で詳しく解説しています。
興味のある人はぜひあわせてご覧ください。
糖尿病とアルコール依存症
糖尿病とアルコール依存症を合併した場合は、アルコールを諦めましょう。
糖尿病にアルコール依存症が合併した場合はアルコールを断たないと、数年以内の死亡リスクが極めて高いのです。
合併した場合の生命予後ですが、具体的には10年で50%ほどの生存率とされています。
アルコール依存症となった人は、アルコール性臓器障害(肝障害や筋障害など)に伴い、糖尿病のリスクが高くなります。
そして、アルコール依存症と糖尿病を合併しアルコールを断つことができない場合、極端な高血圧や免疫不全、低血糖、ケトアシドーシスなどを起こし、自宅で死亡するケースが多いのです。
ただし、アルコールを断つことで、一般の糖尿病と同じ慢性疾患とみなされ、長期的な合併症予防を目標とした治療がおこなわれます。
アルコール依存症と糖尿病を合併した場合は、アルコールを断った上で長期的な治療に取り組むことが大切です。
まとめ
糖尿病とアルコールについてここまで解説したことをまとめました。
- 糖尿病でも適量であればアルコールを飲んでもいい
- 糖尿病の場合、1日に摂取するアルコール量は20~25g
- アルコールの種類は糖質の少ない蒸留酒がおすすめ
- アルコールによる低血糖の症状に注意
- 糖尿病とアルコール依存症の合併症に注意
糖尿病でも、飲みすぎなどに注意すればアルコールを飲むことができます。
ただし、糖尿病の人は飲み方やポイントをしっかりとおさえ、安全にアルコールを楽しみましょう。
Q&A
糖尿病とアルコールに関してよくある質問をまとめました。
Q.糖尿病の人がアルコールを飲むと合併症のリスクがある?
A. 度を越える過剰なアルコール摂取は、合併症のリスクが高くなるため危険です。
代表的な合併症は以下の3つです。
・糖尿病性網膜症
・糖尿病性腎症
・糖尿病性神経障害
また、アルコールの過剰な摂取が続くとアルコール性肝硬変や膵炎、アルコール依存症などになる可能性があります。
糖尿病の人は過剰なアルコール摂取は避けてください。
Q.糖尿病はお酒が強い人ほどなりやすい?
A. お酒に強い遺伝子を持つ人は糖尿病になりやすいといわれています。
アルコール量が多くなるとインスリンの効きが悪くなり、空腹時の血糖値が高くなる可能性があるためです。
ちなみに、遺伝的な要因から、日本を含む東アジア人は欧米人に比べて糖尿病を発症する確率が4倍近く高いといわれています。
アジア人は太っていなくても糖尿病になりやすい体質なのです。
お酒に強く、飲みすぎている、食べ過ぎているという自覚のある人は、痩せていても糖尿病リスクが高いため、生活習慣の改善に努めましょう。